青春遊戯
心は一つ。
だけど心に巡る思いは一つじゃない。
たくさんの思いの中でボクは思い達に飲み込まれ、そして渦の真ん中で静かに立ち止まる。
足のつかない真ん中でただ思いに囲まれて。
どうしたらいいんだろう。
そんな気持ちが心のなかをぐるぐる回る。
複雑だ。
薄灰色な空に赤や黄色の色彩が僕の視界を覆う。少し風が吹けば、もう学ランの襟をしっかり詰めるほど肌寒かった。夏休みも終わり、学校が始まってしばらく経った9月下旬。
その日、学校が終わっていつも通り城之内くんと一緒に帰ってた。暇だからゲーセンに寄ろうぜって言われてそっちのほうに向かってたんだ。他愛もない会話をしながら歩いているとゲーセン付近で人だかりができてる。
「あれ、なんだろう」
「なんかやってんのか?」
ボクたちはなんだか気になって足早に進んでいく。近くまで行くとゲーセンにはたくさんの人がいて何かを一点に見つめてる。きっとすごい人がいるに違いないって僕は思った。
「何してるか見えない・・・」
「んーっと、なんか子供が格ゲーでやりあってるな」
こういうとき城之内くんの身長に嫉妬してしまう。跳ねてみるけどまったく見えない。ボクの行動に気づいたのか城之内くんが少し笑った気がする・・・。
「どんな子?そんなにすごいのかな」
「黒い長髪の・・・小学生くらいじゃね?」
黒い長髪で小学生くらいの子って・・・海馬くんの弟さんも確かそんな感じだったなぁ。髪伸ばすの流行ってるのかな。
「っとこれじゃあ入れないな」
「そうだねぇ」
このまま帰るのがいい感じになって、ボクらは立ち去ろうとした。ちょうどその時集まっていた人がざっと離れた。どうやら噂の子が帰るみたい。
「うーん」
「どうした遊戯?」
ちょっとその子がどんな子が見てみたいかもなんて思った。城之内くんはそれがわかったみたいでボクの視線の先を一緒に見つめた。ちょっとずつ人が後ろへ下がっていく。
「あっ」
「ん?」
やっぱりゲーセンから出てきたのは弟さんのモクバくんだった。ちょっと期待してただけなんだけど本当に的中しちゃった。
「あー!」
どうやらこっちに気づいたみたい。
「遊戯!」
名前を呼びながらこっちに向かってくる。城之内くんはぎょっとした顔でボクとモクバくんを交互に見つめる。
「遊戯、知り合いだったのか」
「えーっとね・・・」
「遊戯みた?オレ様の戦い!」
ニコニコと自慢げに話してる様子は完全に城之内くんを無視しているようで。ボクはちょっと驚きながら会話を続ける。
「ごめん、ボクが見たときはもう終わりかけだったみたい。それにボクの身長じゃ、前みえなくて」
苦笑しながら正直に話した。モクバくんもボクを見てわかってくれたみたいで残念そうな顔で「しかたねーなぁ」と腕を組んでる。
「で、こいつだれよ?」
無視されてるように思ったのか城之内くんが再度ボクに尋ねてきた。ちょっとむすっとした顔をしてるのは気のせい気のせい。
「この子はね・・・」
そういいかけたときモクバくんがボソっとある単語を呟いた。
「・・・凡骨」
「え?」
今どっかで聞いたことのある単語が・・・。
「お前、凡骨だろ?兄サマが言ってたぜ!」
「ちょ、っておめぇ海馬の弟かぁ〜!!」
弟くんに顔を近づけるように威嚇してる城之内くん。その単語一発で誰かわかっちゃうってすごいよ。ボクは二人を落ち着かせようとしたけれど、小学生は容赦がないのかますますエスカレートしていく。
「そうさ!海馬コーポレーションの副社長海馬モクバ様だ。ぼ・ん・こ・つ」
「くそ野郎〜っ!オレの名前は城之内だっ!」
ってかよく小学生相手にむかつけるよ。城之内くんも子供だなぁ。
「まぁまぁ」
「というか、だ」
今度はこっちを向いて睨んでくる城之内くん。
「ぬぁんで遊戯が海馬のやつと知り合いなんだよ」
うっ・・・。隠していたつもりはなかったんだけど、仲が悪そうだったから黙っていた。それに最初は友達とかそういうのじゃなくて、ただ知り合ったって感じだったからなんだけど・・・。
「勉強を教えてもらってたんだ・・・」
「もしかしてテスト期間、海馬に教わってたのか!?」
「うん、そうだよ」
心底嫌そうな顔をしてボクを見てくる。どれだけ海馬君のことを嫌っているのかよくわかる・・・。
「何がそんなに嫌なの?」
「そうだぜぃ!兄サマは成績優秀スポーツ万能その上社長っていったら完璧なんだ!」
それだけだとなんだか傲慢そうで嫌われそうな謳い文句だけど。
「海馬くん勉強を丁寧に教えてくれたし、そんなに嫌われるところなかったような気がするんだけど」
「遊戯!・・・ちょっとこっち来い!」
袖を引っ張られてモクバくんから離される。
「ちょ、ちょっとモクバくんが・・・」
「ふんっ、後で兄サマに言いつけてやるからな!」
機嫌を損ねたみたいで、離れるのと同時にどこかへ行ってしまった。きっと会社か家だろうけど一人で大丈夫なのかなぁ・・・。
ボクの心配を他所に城之内くんはモクバくんが去ったのを確認すると手を離してくれた。
「もう、何するんだよ」
子供っぽい行動をとる城之内くんに少し呆れる。
「弟が知らなかったらマズイからよぉ」
「えっ?」
「オレは海馬のやつが嫌いじゃなくて苦手なんだよ。あいつ・・・ホモだから」
え。ホモって・・・。
「ええっ」
「さすがに弟は知ってるかもな・・・」
ボクの驚きをおいて一人モクバくんがこのことを知っているかどうか考えている。ボクは今までの色んな情報よりも一番驚いた気がする。
「ちょっと待って、それは噂とかいじめとかで・・・」
「いや、中学のやつは知ってるな。別に対象にならなきゃ害はないんだけど・・・オレはトラウマ」
どうやら城之内くんは「対象」だったみたい。
「遊戯、やつにあんまり近づくなよ!」
城之内君はボクが次の「対象」だって思ってるみたい。心底心配してくれたみたいで、帰りの家までも城之内君がついてきてくれた。城之内くんから知る海馬くんの情報はどれも驚くものばかりでボクは海馬くんっていう存在が苦手とかそういうことよりも不思議な人って感じだと思った。ホモって聞かされたけど正直それは個人の自由で仕方ないことだと思うんだ。こんなことを思うボクはおかしいのかな?
「でも、本当にボクのことが好きだったらボクはどうすればいい?」
・・・いやいやいや、何考えてるのボク!!
海馬くんがボクみたいなのを好きになるわけないじゃん!
城之内くんみたいにカッコイイ人を好きになるんだよ!
それに今までそんなそぶりなかったし!
純粋にお友達として仲良くなってるよボクたち!
それに好きだったらもっと会ったりとか話したりとか色々・・・色々・・・
・・・考えるだけで虚しくなってきた。
コメント
今回短いですね。(反省