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青春遊戯
心は一つ。
だけど心に巡る思いは一つじゃない。
たくさんの思いの中でボクは思い達に飲み込まれ、そして渦の真ん中で静かに立ち止まる。
足のつかない真ん中でただ思いに囲まれて。
どうしたらいいんだろう。
そんな気持ちが心のなかをぐるぐる回る。
知りたい。
連絡先を交換したあの日から、ボクの携帯は必ず一日一回はポケットの中で振動した。学校に居る間は決まって昼休みが始まる時と放課後。彼は理系進学クラスにいるから教室が離れているんだ。だから授業が終わるとメールで連絡が来る。
えーっとなになに・・・今日は来れないかぁ。仕方ない、教室で勉強しよ。
もうテスト期間中だから午前が終わったら帰ってもいいんだけど、勉強教えてくれるって言うからコンビニ寄ってみたんだよね。
「遊戯」
「ん?どうしたの?」
コンビニで買ってきたおにぎりを食べようとした矢先、城之内君が購買部で買ってきたと思われるパンを手に近づいてきた。最近じゃ城之内君もテスト勉強のため友達に頼ってたみたいでバラバラだったんだ。
「数学どう?」
「んー・・・まぁなんとかなるんじゃないかな」
テストも後二日で終わる。最終日に数学でホントよかった。海馬君は自分の勉強をしないみたいで、それでも結構上に居るみたい。
「今日も教えてもらうの?」
「さすがにテスト中は自力だぜ。遊戯一緒にしねぇ?」
んー、今日海馬君もムリみたいだからいっか。
「いいよ!どこでする?」
「いつもどこでやってんの?」
「図書室」
「じゃあそこでいいぜ」
いつもの席空いてるかなー。そんなことを考えているボクと違って、城之内君は焼きそばパンをおいしそうに頬張ってる。城之内君も数学勉強するのかな・・・。
当然のごとくテスト期間中の図書室は混んでいる。静かな空間もこの時期はざわざわと人の話し声が絶え間ない。ボクはいつも使ってる机に向かってみた。あれ?空いてる!
「城之内君、こっちこっち!」
「んー・・・」
ゆっくりと近づいてくる。どうしたんだろ?
「遊戯ここ使っていいのか?」
「どうして?」
空いてないのかな・・・もしかして。でも誰も使ってる様子はないし。
「いや、まぁいいか」
歯切れ悪く会話をやめるとボクの席の向かいに座った。キョロキョロと誰かを探しているかのように頭と目を動かしている。
「誰か探してる?」
「海馬の野郎」
あれ?城之内君と海馬君知り合いなんだ。
「海馬がいなけりゃそれでいいんだ」
んー仲悪い?もしかして海馬君がボクに話しかけてきたきっかけは城之内君なのかな。なんか初対面って感じで話しかけてなかったしね。
「仲悪いんだ?知り合いってことも驚きだけど」
「悪いっつーか、まぁ中学のやつらから嫌われてるからな。あいつ性格悪いし」
えっ?そんなに性格悪い感じはしなかったけどな。んー強引なところがあるけど我侭みたいなわけじゃないし・・・。
「この席もあいつ金で確保したって噂あったしな」
「え?それして何の意味があるの?」
単純に驚いた。そんな馬鹿げた噂が流れているってことに。海馬君、誰かに妬まれてるのかな・・・。友達居ないって言ってたし、賢すぎて目付けられたとか・・・!
「知らねぇよ。金持ちのやることは」
その言葉じゃ城之内君は噂を信じているのかな。それにしても学校の席とか確保できるわけないじゃん。
「金持ちって言ってもそんなこと・・・」
「あいつならやりかねないぜ!この学校にいくらか金出してるだろうし、校長は頭あがらねぇだろ」
それがほんとならすごいけど・・・。
「海馬君んちそんなお金持ちなんだ!」
「あいつ社長だしな」
「社長!?」
今日は勉強どころじゃないと思った。ボクの知らないことがいくつも出てくるんだから。海馬君がたまにしか学校に来ていないこと、成績は上位じゃなくてトップとか、会社は世界進出まで果たしている大きな会社だとか、ボクの見てきた海馬君とはなんだか大きく離れていた。
そりゃあ中学時代はボクは違う学校に居たからって・・・こんな人いたら耳に入ると思うんだけど。
「社長になったの2年前くらいだしな」
そういって思い切り驚くボクに城之内君は面白いものを見るみたいに笑った。
「関わらなきゃしらねぇよ」
ボクが海馬君と勉強したり、メルアドを交換したことは知らない。ボクと海馬君の関係は名前を聞いたことあるくらいしか思ってないんだろうな。
その日ボクはまったく勉強に手がつかなかった。海馬君に聞いてみたいことがたくさんあってメールしてみようかと思った。
だけど、そんなこと答えてくれるだろうか。
結局何も聞かなかった。
ボクが海馬君の友達になれたのは何も知らないからじゃないかなって思ったから。
「遊戯ーご飯よー」
「はーい」
今日のご飯はカレーライスだね!この日だけはボクだってわかる。
「おじいちゃんも席に付いてください」
ソファーで新聞を読んでいたじいちゃんがのっそりと立ち上がる。新聞はまだ読み足りないのかそのまま持ってきた。ママは仕方ないって顔をしてボクの隣に座った。
「海馬コーポレーションもまたやりよるな・・・」
海馬・・・。
「いただきますよ!」
「失敬」
叱られたじいちゃんの言葉が僕の中で繰り返される。
海馬コーポーレーション・・・海馬コーポレーションか・・・。
コメント
まったく海馬君出てこないのに海馬って何回打っただろう←