夢幻遊戯
約束の日。
待ち合わせとか、どこで会うとかそういえば言ってなかったなぁ・・・なんて思って心配してると、ボクの家の前に一台のリムジンが停まった。真昼間からこんなところに止められると結構迷惑とか思っちゃいけないんだけど、思った。
「遊戯様、お迎えに参りました」
この前の運転手さんがすごい笑顔。何か嬉しいことでもあったのかな。
「えーっと乗ればいいんだよね?」
「はい。どうぞ」
恐る恐る後ろを振り返る。じいちゃんやママが心配そうな顔してこっちを見てる・・・。
「あ、友達金持ちなんだ!」
それだけとりあえず言って急いで車に乗った。だってあのままいたら色々質問されそうだったしね・・・。
一番後ろの席に座ったボクは見慣れない光景に緊張する。運転手さんがあんなに遠くに・・・ってどうしてボクが海馬君のところに行くのか知ってるのかな・・・。
「前回の通りで大丈夫ですので、お進みください」
着いた先は海馬君の家じゃなくて、会社のほう。フロントのお姉さんがにこっと笑顔で迎えてくれた。ボクは言われた通りあの社長室専用エレベーターに乗った。
うわぁ・・・今度は開いたとたん海馬君が居るんだ・・・。会ってまずどうしよう・・・。ちゃんと伝えられるといいんだけどなぁ・・・。
電子ベルっぽいのが一回鳴って扉が開かれる。うぅ、予想通り真正面に海馬君。
「久しいな、遊戯」
「こんにちは・・・」
ソファに座っていた海馬君は仕事とかしていたみたい。書類が少し散らかってる。海馬君はなんかわからないけど、すごい大きなコート?みたいなのを羽織ってて、いつもあんな服着てるのかな・・・。でも少し違和感が・・・。あ、脱いだ。
「そんなところで立ったままではな」
「あ、ごめん」
か、海馬君のこと見過ぎてたよね!ボク!
「そこに座れ」
「うん・・・」
ビクビクしながら向かいの席に座ると、海馬君は不振そうな目で見てきた。
「捕って喰ったりしない」
「やっぱり緊張くらいする・・・んだよ」
「オレが社長だからか?」
「目の前に海馬君がいるし、これからのこと考えたらね」
そういうと海馬君はニヤリと笑った。なんかおかしなこと言ったかな・・・。
「遊戯の気持ちはわかった」
「え!?まだ何も・・・」
「オレをみて緊張するんだろう?断るなら緊張はしないはずだ。それに見てるだけで緊張するなど・・・」
「え?!そ、そんな!」
ボクの告白はさっきのでなくなったの!?せっかく昨日なんていおうか考えてたのに。もう・・・海馬君笑ってるし。
「遊戯の気持ちの前にオレから言わせてくれ」
「う、うん」
な、なんか強引だけど・・・まあいいか。海馬君がボクを好きってことはまだわからないんだから。
「少し、長くなる・・・」
すごい告白・・・なのかな。
「オレは夏休みの間に別荘に居た。遊戯は何も聞かなかったが、何故と思っただろう」
「うん」
「あれはモクバから離れていたのだ」
「え?」
命を狙われてるんじゃなかったんだ・・・。
「でも、どうして?」
「オレは・・・あの頃、モクバのことを・・・兄弟としてではなく・・・欲望の対象として見ていた。ひとつの「好き」・・・というものかもしれない」
え!?・・・えーっと・・・?
「頭を冷やせば忘れられると思い・・・あの場に居た。しかしその感情が消えることはなかった」
「会いたい気持ちがきえなかったってこと?」
「そうだな。気分転換のためにあの川の傍まで行ってたのだ。そこで遊戯に会った」
そうだったんだ・・・。
「最初は弟と重ねていた。幼く見えるその容姿に、オレのことを知らないまま接する姿がどこか似ていたのだろう」
お、幼いって・・・。
「遊戯に叱られたときがあった」
「え?!そんなことしてないよ!」
ボクがそんなことしたかな・・・えーっと・・・いつだろ・・・。
「魚がつれないといってオレが釣竿を取ったときだ」
「えー・・・叱ったかな?」
「断りもなく勝手に取るなと言っていた。あの時はモクバ以外にオレを叱るものなど居なかったので驚いた」
「ごめんっ」
「謝る必要などない。むしろ謝るのはオレのほうだ。その頃から思い浮かぶ顔がモクバから遊戯に変わっていた。そして弟の代わりとして遊戯を傍に置くことを考え始めた。大切な弟を自分で傷つけることから逃れるためにな。そして夏休みが過ぎ、同じ高校に通っていることを知った。運命・・・などと思いたくはないが、やはり傍に置くべき人間なのだと思った。モクバも遊戯のことを気に入っていたしな」
これって・・・ボクのこと好きってことじゃないってことだよね・・・。すごい告白だけど・・・すごすぎて・・・ちょっとついてけてないんだけど・・・。
「そんなオレの心が変わったきっかけはあいつだ。・・・バクラが遊戯のことを狙っていることを知った。ふぅん・・・あいつは遊戯にはからかっていると思われていたようだが、オレからすれば本気だろう。あいつの態度はオレが見ても腹立たしいものだったからな。屋上でのこと考えただけでイライラするほどだ」
えーっと、ん・・・海馬君が怖い顔してる・・・今どうなってるの?!
「ちょっと待って!」
あ、大声出しすぎた。ってそんなことより!
「バクラ君本気だったの?」
「見ていればわかるだろう」
「いや、わかんないから!!それとモクバ君への気持ちはどうしたの?!」
「それが・・・醜い感情はなくなっていた。反対に遊戯にその感情が動いていたのだ。こればかりは何故かは知らん」
えーっとつまり、獏良君とボクの関係を見られていたってことで、それを見たから・・・えーっと・・・イライラしたってことは・・・それって・・・。
「嫉妬がモクバくんからボクに移ったってこと?」
「・・・嫉妬というのか?」
「モクバ君が他の人に見られたりするとイライラしなかった?」
「したな・・・自分だけになど・・・考えていた」
独占欲も強そうだね・・・。
「しかし、今は遊戯に移っている」
そんな真顔で言わないでよ・・・。恥ずかしいような・・・何と言えばいいのやら。それにボクのこと好きになる過程が激しすぎるよ・・・。最初わけわかんないじゃないかっ。
「そして今はボクが好きということなんだよね?」
「そうだな。独占したいと思っている」
「内容は把握しましたっ!」
・・・ってなんか告白なんだけど、告白っぽくなくなってる。ドキドキしてたのもなんか混乱に変わってるよ!
「そういうわけだ。遊戯にはそれを知った上で気持ちを言ってほしい」
あ、そういうことなんだ。い、今からボクのターンだね・・・?
「ボクは・・・海馬君と一緒に居たら楽しいし、ドキドキするし、傍に居なかったら海馬君のことばかり考えてる。キス・・・も嫌じゃないし・・・ボクも海馬君のこと好きなんだ」
「さっきオレが言ったことも含めていいのか」
「うん、海馬君があれだけ素直に言ったんだ。ボクも好きって思われてるって信じる」
「現に好きだ」
「わ、わかってるってば!」
夢の告白・・・じゃなかったけど、こうして終わって見るとちょっと安心。
「晴れて恋人と言うことだな」
なんか海馬君が言うと恥ずかしいんだけど・・・。
照れていると海馬君が立ちあがった。
「では今から社に通達しておく」
「何を・・・」
「遊戯はオレのものだと伝えるのだ」
ちょっとっ、そんな真顔で言わないで!!
「待って!ボクたち男の子なんだよ!?ちょっと!それ普通じゃないんだよ!」
「男女差など関係ない。遊戯を誘惑するものはクビだと・・・」
海馬君なに言ってるのー!?
「それボク困るから!内緒にしよ!!ね、お願い!!」
「・・・わかった」
ボクの必死さが伝わったのか、それはやめてくれた。だけど海馬君ってもっと常識ある人だと思ってたけど違うの・・・かな?獏良君とかボクは変わってるんだよ・・・。自分が言うのもなんだけど。
「では今晩は家には帰さん。そのつもりでいろ」
「えー!?」
「社に通達されるのとどちらがいい?」
「か、海馬君・・・ずるい・・・」
この様子だと社に通達しないでもボクたちの関係はバレる気がする。
「モクバだけは条件などないぞ」
・・・ブラコンなのは変わってないってことだね。うん、わかった・・・ってうわぁっ!!
「いきなり抱きつかないでよ!」
「縛られる枷などないのだからかまわない」
ニヤリと笑われた。優越感浸る顔で。
もしかしたらボクはだまされてたんじゃないのかな・・・。大人しい、しおらしい海馬君に。ゲームで「貴様」って言ったり、耳元で自信気に囁いたりする海馬君が海馬君なんじゃないかって。本当はモクバ君の話だって・・・。
「オレ以外のことを考えるな」
うわぁ・・・後ろから耳元で囁かないで・・・。
「顔が真っ赤だな、遊戯」
「海馬君性格変わってない?!」
「オレは何も変わってない。遊戯の態度こそ変わってるのではないか?」
楽しそうに聞いてくる海馬君。なんかずるい。
「顔が見にくいな」
くるっと返されたボクは子ども扱いのようで恥ずかしかった。
「好きだ、遊戯」
ボクは・・・海馬君が・・・。
「ボクも・・・好きだよ」
どんな性格だって結局ボクも好きなんだ・・・。
チンッ
うわぁ・・・もしかして・・・どうしよー!?
「ただいま兄サマ!」
「お帰りモクバ」
「遊戯、って兄サマ!遊戯どうしたんだ?!」
「・・・どうやら気を失ったようだ。ベッドへ運んでくる」
「介抱してあげるなんて兄サマはやっぱ優しいな!」
「当たり前だ」
気絶した振りをしたボクをニヤリと嫌な笑みを浮かべながら海馬君見ていたことはもう何も言わない。
おわり
コメント
ギャグ漫画を読みすぎてシリアスは無理でした。←
もっとギャグにしたかったよー(ぇ
今回はやっつけ!なんて言わせないぞっ!(シネェェエエエ!!