夢幻遊戯






 モクバ君が帰ってきたのは10分後だった。
 ボクはソファーに座り込んだままじっとしていると海馬君は奥の部屋に戻ってしまった。モクバ君が帰ってきたときボクはひどく安心して迎えた。
「おかえり!モクバ君」
 モクバ君も待ち焦がれていたかのようにボクに向かってくる。磯野さん何か伝えるとすぐボードを持ってきて、楽しそうにカプセルモンスターという新しいゲームについて教えてくれた。

 
 
 それから海馬君ともあまり会うことなく三週間が経った。つまらない授業を聞きながら少し眠たくなっててどうしても集中できない。開いてる窓から吹く風につられてボクも窓のほうを向いた。
 海馬君は学校に来てない。なんとなくだけどこの一ヶ月間来ることはない気がする。なんとなくだけどね。
 代わりに獏良君がよく来るようになった。最近は周りから仲良し三人組みたいに思われてるらしくって・・・うーん、少し困る。

「遊戯、今からサボってどっかいかねぇ?」
 昼休みの屋上で獏良君が楽しそうにこっちを向いた。城之内君は冗談交じりで賛同してる。そんな予定はボクにはないんだけど。
「行かない行かない」
「真面目だなぁ」
 今度はつまらなさそうな顔をする。
 そういうことじゃないと思うんだけど・・・。第一獏良君の出席足りてるのか心配だよ・・・。
「オレ様我慢できねぇんだけど」
「何の?」
 城之内君がきょとんとした顔をで獏良君に尋ねた。ボクはどういう意味かわかってしまったけどあえて黙ってた。
「エネルギー充電みたいな?」
 そう城之内君にニヤニヤした顔で言う獏良君。
 そんな爽やかなものじゃないでしょ!あ、獏良君がこっちみてニヤニヤしてる。
「なんか楽しいことないかな」
 はぁ・・・。


 学校に海馬君が来ないからって会わないわけじゃない。半月くらいの間、海馬君とは4回ほど会った。1回目はモクバ君に呼ばれたとき、2回目はプリントを届けたとき、3・4回目は職員室で。
「こんにちは、海馬君」
「あぁ」
 それだけなんだけど、ボクは何故か満足って言うかホッとした。笑ってもくれないわけだけど、それはモクバ君だからこそだと思うから。


「遊戯、最近シカトしてねぇ?」
「え?!」
 海馬君のことを少し考えていると獏良君の顔が近くにあった。
「考えごとか?」
 城之内君がフォローしてくれた。ボクは「ちょっとね」といって笑う。
 もうすぐ答えを出さなくちゃいけないからね。
「獏良君、好きってどういうことかな?」
「好きなやつでもいるのか!」
 獏良君に言ったのに城之内君が驚いた顔をしてこっちを見た。
「わかんないんだ。そうかもしれないし、違うかもしれない」
 ボクは城之内君に困ったねと言って笑った。簡単に答えが出ればいいのにさ。城之内君は本気で好きって意味を考えてくれてるみたい。難しい顔をしてる。
「俺は単純だからよ、触れたいとか傍に居たいと思ったやつならそうだと思ってるけど・・・」
 そういう城之内君の顔は真っ赤。誰か好きな人がいるのかな?追求してみたいけど、今は真剣に考えてくれたからやめとこ。
 ・・・あれ?獏良君が大人しい。
「触れたいかぁ・・・」
 海馬君とまたキスされてもいいかなって思うのはそういうことなのかな・・・?傍に居たいってのは会いたいと思う気持ちも入るのかな?
「会いたいと思う気持ちは・・・」
「それももちろんだぜ!」
 そっかぁ。ボクの気持ちは海馬君を好きって気持ちなんだ。海馬君が好きなんだ・・・なんだか考えてて恥ずかしい。でもそう思ったらなんだか気持ちが晴れたみたいな、モヤモヤは消えたっていうか・・・すっきりしてる。
「ありがとう」
「たいしたこといってねぇけどな!」
 照れ笑いの城之内君。獏良君はと言うとさっきから大人しい。つまんないのか欠伸をしている。
「ってことだよ、獏良君」
「あぁ?・・・そうかよ」
 また欠伸をした。結局ボクのことはからかってるだけだったんだ。まぁそうだよね。

「遊戯、どっかいこうぜ」
 ボクが帰る支度してると獏良君は昼休みのことをまだ引きずっていた。獏良君わかってるくせに誘うんだ。なんでもないかのような顔をして近づいて。
「ボクはもうキミとはあんなことしないよ。ボクが好きなのは・・・キミじゃないから」
 クラスの皆が居たけど、皆気にしてないみたいだ。城之内君はバイトで帰っちゃったから獏良君が一緒に帰る相手だと思われてるのかもしれない。
「オレ様には関係ないからよ」
 ここだって構わないんだぜ?と耳元で囁かれた。ニヤニヤした顔して余裕な態度で・・・なんかさすがにボクもムカつく!
「最低だよ!ボクを何だと思ってるの!!」
 知らないっ。獏良君の気まぐれには付き合ってらんないよ!頼りになる仲間みたいだったのにさ。
 ボクは走って逃げ出した。
 獏良君にからかわれてもうたくさん!

 一人残された獏良は気まずいクラスの雰囲気など気にすることもなくただ小さく呟いた。
「オレ様・・・ふられてやんの。だっせー・・・な」

――男相手に冗談とかありえねーっての。





 コメント
次で最終回にする!ドンだけ長くても最終回にするんだ!!