夢幻遊戯
「遊戯には少し、お仕置きが必要だな・・・」
ちょっと、どういうこと・・・?なにこれー!?
ボクは今、海馬君越しに海馬コーポレーションビル最上階、社長室の真っ白なタイル張りの天井を目を必死に動かしながら見つめていた。ついさっきまで、なんとなしにここを訪ねてちょっと会話しただけだって言うのに・・・。
最近、皆おかしな病気にでもかかってるのかな・・・。
昨日はモクバ君と遊ぶ約束をしたんだ。新しいボードゲームが出るから一緒にしようって。もちろん暇だったし、ボクはOKって伝えた。
「ありがとう遊戯ィ!」
学校の門で待っててくれたモクバくんに断るのも失礼だしね。
それで今日学校が終わって、海馬君の家に行ったらモクバくん仕事がちょっとあるみたいで海馬コーポレーションビルに送られた。
あのリムジンでだよ!あれに乗るとやっぱり緊張する。
ついてからも緊張の嵐・・・!
おっきいってわかってたけど、やっぱり大きい!
ボクなんかが入って良かったのかな・・・。
「お客様、ご用件は?」
「あの、武藤遊戯って言うんですけど・・・」
運転手の人に名前を言えって言われてたんだ。
「あ、武藤様ですね・・・っ!右に警備員がたっていますよね?」
綺麗なお姉さんが素早く場所を案内し始める。
カウンターから右方向に、黒いスーツをきた男の人が二人立ってた。
エレベーターだよね?
「あちらは社長室直通エレベータとなっておりますので、そちらへどうぞ」
「え?」
「モクバ様にお通しするよう連絡がきておりますので、安心してください」
「は、はい」
これって傍から見たらVIP待遇になってるよ
フロントの奥にも3台のエレベーターがあるんだけど・・・。ちょっともうちょっと考えてよ・・・。
ボクは恐る恐る黒いスーツを着た人に近づいていく。ボクのことはカウンターの声を聞いていたのか、何も言わず開くボタンを押してくれた。
「ありがとうございますっ!」
そう言って中へと入るとガラス張りのエレベーター。
きっとこれも防弾ガラスとかなんだろうなんて考えていると、社長室への扉・・・っていってもエレベーターの扉なんだけど、それが開いた。
緊張しっぱなしだぁ・・・。
中に入ってみると海馬君らしくシンプルな部屋だった。中央にソファがあってその奥にいかにも社長です!って感じの机にデスクトップパソコンが置かれてる。海馬君の姿は・・・みえない。でも青眼白龍の像が代わりにオーラを出している。
右手側にもう一つ扉があってそっちにいるのかもしれない。
ボクはどこにいればいいのか分からなくてエレベーターの前で立ったまま。
「誰か・・・来てくれないかな・・・」
社長室だから二人くらいしか来ないんだろうけど・・・。
ピーピーピー・・・!!!ピーピーピー・・・!!!
「!!」
び、びっくりしたぁ・・・。
呼び出し音が机の辺りから響いてきた。なんか知らないけどすごい音。
とっちゃいけないだろうからボクは固まってるしかない。
ガチャ
「仮眠もろくにできんとは・・・」
あ、海馬君だ。
「・・・」
あ、海馬君一瞬固まった。
「・・・」
あ、額のしわ寄せた。
「待ってろ」
「気にしないで!」
うるさいコールが鳴り止む。代わりに海馬君が何を話し始めた。ボクには何言ってるのかわからないけど、試作品の改良について言ってるのだけわかる。パソコンのモニターもしっかりみてるから映像も送られてるんだと思う。たぶん。
「ではそれで始めてくれ」
電話じゃなかったみたい。マイクでも置いてあるのかな?キーボードを一つ叩く音だけが聞こえてきた。まじまじとその様子を見ていたら海馬君がこっちを向いた。
「遊戯・・・」
あ、そうだった。
「こんにちは・・・こんばんはかな?」
「いや、そうではない。何故ここにいるんだ?」
知らなかったんだ・・・。
「えーっとモクバ君に呼ばれたんだ。お邪魔してごめんね。ここに通されたから海馬君知ってるのかと思ったんだけど・・・」
なんだか気まずい気がする。
「モクバは視察に行ってる。一時間ほど待たせてしまうな」
「あ、気にしないでいいよ!そこ座ってていいかな?」
ソファーに視線を移すと海馬君は「かまわん」とだけ言った。
居場所が無くてしょうがなかったんだよね。
「ありがとう、えーっと仮眠途中だよね?気にしなくていいから!」
後から考えると大きなお世話な一言だった気がする・・・よね。緊張しすぎて余計なことまで言っちゃう。
「いや、目が覚めた」
「そっかぁ」
気まずくてそれしか言えない。
とりあえずソファーに座らせてもらった。うわぁ・・・体が沈む・・・。やわらかい。
「・・・バクラと付き合っているのか?」
「え?!」
ソファーに気をとられてたら何か言われた。聞こえてたけど、聞こえなかったことに・・・。
「バクラと付き合っているのか?」
できないみたい。
社長席からボクを見つめている。絶対変な奴だと思われてる。
「違う違うよ?ボク至ってノーマルで男が好きとかじゃないから!獏良君のほんの冗談みたいなんだ。えーっと誤解してたらそんな感じだから・・・」
「遊戯はそう思ってるわけか」
「まず付き合ってないし、ボクをからかってるんだよ。海馬君だってボクのことこの前からかってたでしょ?ああいう感じだよ、うんうん」
ボクは必死で弁解した。勘違いされたくないっていうか、嫌われたくないって言うか・・・。
「遊戯には少し、お仕置きが必要だな・・・」
そう言って海馬君が近づいてきた。
・・・また獏良君のときみたいに怒らせちゃった?ボク。
ソファーに押し倒された。海馬君の顔がすごく近くて、ドキドキする。綺麗な青い瞳の中にボクがいる。何するんだよぉ・・・。
「オレはからかってなどいない」
え?
「からかってキスなどせん。訂正しろ」
ナニを言ってるの?海馬君もボクみたいに悩んでたってこと?意識してたってこと?
ボクのことスキってこと・・・?
「あいつと一緒にするな」
真剣な目がボクを捉えていた。ボクは心臓の音がうるさいけど、うるさくなかった。そんなことよりもなんて言えばいいのかわからなかった。ボクは海馬君のこと好きなんだろうか。それがわからない。
「からかってないのはわかったよっ」
そこはちゃんと言わないと。
「では答をくれ」
海馬君は答を求めた。
ボクはそれに対して答えられるだけの気持ちの整理や意識をもっていなかった。それに海馬君だってボクへの気持ちを言った訳じゃない。
「それは今答えられないよ」
「・・・」
「それに海馬君の気持ちもわからない」
ボクが海馬君を見つめると、海馬君も答えることはできなかった。ボクのほうを向いてボクじゃないどこかへ視線を向ける。
「分かった・・・一ヵ月後互いに答を用意するとしよう」
「・・・うん」
その日はそれが海馬君との会話だった。
ボクは海馬君のこと好きなの・・・?
オレのこの感情はなんなのだ・・・。
コメント
なんでこうくっつくまでが長いんですか、私。
早くくっつけよって思いながらも、会話させるとくっつかないorz