夢幻遊戯
一つ。
気まぐれな獏良君のことだから本気にしない。
・・・すごく、真剣な目をしてたけどあえてそう考えてみる。きっとボクをからかっている演技で、だから多分、今笑っている獏良君は面白がっているんだ。
「昨日の件で難しい顔すんなよ。ちょっとした楽しみが増えるだけだぜ」
獏良君はもうボクの答が欲しいわけじゃなくて、ボクと獏良君の関係は決まってしまっているかのように話しかけてくる。
「決まったわけじゃ・・・」
「なら今、ここで確かめてやってもいいぜ?本当に嫌かどうかをよぉ」
またニヤついた。
秋になっても真夏のような太陽のせいで、昼休みの少し熱いコンクリートの屋上に今は二人っきりだった。海馬君はいつもいないし、城之内くんは何故か今日は休み。タイミング悪いよ・・・。
「じゃあボクが嫌がれば諦めるの?」
日陰の一画に座っているボクはフェンス近くに立っている獏良君を見上げた。
「そうなんじゃねぇの?」
「なんでキミの問題なのに疑問系・・・」
ボクは不満そうに見たけど、獏良君は気にしてないみたい。
「そんときにならねぇとわかんないだろーが」
そんなのずるい。結局獏良君に決定権があるんじゃないか。ほんと、発想が自由すぎるよ。
「難しく考えるなって」
そう言いながらボクの傍に座った。すぐにでも確かめられそうな距離。
「束縛なんてしねぇよ。たまに会ったら、」
「ん!・・・んーん!」
こうやって気持ちよくなるだけだぜ。と目が言った気がする。
最初は閉じていた口も、唇をなぞるように舌が動いて、吸われて、優しく噛まれると、ビリッとそこから何かが走った。
「ぁ・・・あっ・・・」
そうなると頭がぼーっとして、噛まれた唇はもう敏感になってて舐められるだけでぴくっと身体が震えた。
「やっぱ・・・嫌がってねぇよな」
舌が入ってきて、前みたいに優しくなぞられる。
「んぁ・・・ん・・・はぁ・・・っ」
少し引いたボクに気づいて、頭を固定するように押さえられた。
「気持ちいいんだろ・・・」
「はぁ・・・んぅ・・・」
舌の先を弄られるともう耐えられなかった。ボクも舌を動かしてしまう。だめな気がするのに・・・気持ちいいんだもん。
「・・・んはぁ・・・あ・・・あぅっ」
「その顔・・・最高」
どんな顔かわからない。
「素質あんじゃねぇ?」
なんの?とは聞けなかった。腰の辺りからすぅーっと上に刺激がボクを襲ったから。
「ひゃっ・・・ああぁぁ・・・」
触れているのかも微妙なタッチで獏良君の指がボク身体をなぞっていく。
「もっ・・・だめっ・・・っ」
「もうイっちゃうってか?」
「じゃなくて・・・っ」
人影がボクの視界に入っていた。バッと精一杯離れる。すると獏良君も人影に気づいたみたいで、すぐに止めて一緒に人影が誰か見つめていた。
意外とバレたくないのかな?
そう思いながらボクは呼吸を整えた。
二つ。
海馬君とは何の関係もない・・・よね。
「おっ、海馬じゃねぇか!」
「えっ!」
呼吸を整えていると獏良君が意外な人の名前を呼んだ。
「・・・」
海馬君はボクと獏良君を交互に見てこっちに向かってくる。
「ここにいたのか」
「こんにちは、海馬君・・・」
内心ドキドキと心臓の音がうるさくてたまらなかった。
「あいつはいないのか」
あいつってのは城之内君のことだよね?休みだよっというと、海馬君はボクの隣に座った。いつもなら城之内君がいる位置に。そうなるとボクは二人に挟まれる形になった。
「社長さんは今来たのか?」
「あぁ」
ボクの顔を一瞬見た気がする・・・。なんだろ。
「で、遊戯でも見にきたのか」
少し冗談を含んだ問いにボクはドキッとした。このタイミングで言うなんて・・・。
「そうだ・・・が、邪魔をしたようだな」
「え?!」
そうだって・・・どういうこと?それに邪魔って・・・見られてたの?!
ボクは思いっきり冷や汗が出ていた。
「てかよ、遊戯にキスしたことあるだろ?」
さもなんでもないことのように獏良君は海馬君にそういった。ちょっとなんでそんな話になるの?!普通隠すとかするもんじゃないの?!
「・・・あるな」
ってどうしてそこで肯定するんだよー!
「ちょっと待ってよ!さっきからボクのプライバシーないじゃないか!」
ボクは堪らなくなって二人の会話に割って入った。海馬君は相変わらず無表情だし、獏良君はニヤニヤしてる。どうなってるのか全くわかんないよ。
「遊戯、隠したいならなんとかしろ」
海馬君がボクを見つめた。
「胸元がはだけている上、いつもシャツを出してないだろう?」
「なっ!」
よくよく見てみると言われたとおり、上から二つ目までのボタンが外れてシャツは一部だけはみ出ていた。
海馬君に変態って思われた・・・。絶対嫌われた・・・。
「くっくっく、だめだっ!」
ボクが恥ずかしいあまり固まっていると、獏良君が笑いを堪えきれないって感じで大笑いし始めた。
「今まできづかねぇとか!」
・・・楽しそうに笑ってる。
どうやらすぐに止めたのはそれに気づいたからみたいだ。やっぱりからかって遊んでるだけなんだ!
「あまり虐めてやるな」
「おー社長さんは優しいな」
「フンッ」
獏良君なんて知らない!でも・・・海馬君嫌いになってないのかな・・・。無表情のまま変わらない海馬君はどっちかというと元々ボクに興味なんて無いんじゃないのかなっと思う。
「でもそれと、海馬君とのことと何の関係があるの?海馬君は気にしてないかもしれないけど、ボクは・・・」
あとの言葉をどう言えばいいかなぁ・・・。えーっと・・・。
「オレを意識したのか?」
「えっ!・・・・・・そうだよ」
うぅ・・・耳元で囁かなくたっていいじゃないかぁ。
「遊戯、顔真っ赤じゃねぇ?」
「知らない!」
二人ともボクをからかってそんなに楽しいのか!
「へぇ〜おもしれぇじゃん」
全然面白くない。
「オレ様久しぶりに燃えてきたかもしれねぇ」
「何の話し?」
ん?なんかボクとの会話じゃなかったみたい?
「フンッ・・・貴様に敗北を味わわせてやるわ」
反対にいた海馬君から不吉な言葉が聞こえてきた。なんか二人だけで会話してる・・・。見た目には分からなかったけど、二人って仲いいんだ。
「仲いいんだね」
そのまま言葉にすると獏良君は苦笑いをした。
「遊戯天然だな」
「そうでもないよ!」
「へぇ・・・」
・・・否定しても相手にされないんだけど・・・。なんかため息つかれたし。海馬君も否定はしてくれなかった。
考えてみるとこうして二人が会話してるのははじめて見たかもしれない。ボクはなんだかちょっと安心したけど、どこかで寂しさも覚えていた。
不愉快だ。
乱れた服であいつの隣にいる遊戯をみるとその言葉が浮かんだ。
もちろん精神的にも不愉快極まりない。
少し上気した顔に白い首筋、潤いを持った紫色の瞳で見つめられたとき、不覚にもモクバに向けていた感情が沸々と湧いてきた。
オレ以外の者にそんな姿を見せるな・・・と。
それはオレへの明らかな裏切りかのようだった。しかし、遊戯はそんなことなど考えてはいないのだろう。
「少し・・・わからせてやる必要があるな」
「兄サマ・・・?」
・・・オレとしたことが仕事を優先すべきときだ。
「なんでもない。モクバ」
「兄サマ疲れてるなら休みも必要だぜぃ!」
「あぁ」
明るく笑顔を向けるモクバを見ると心が和む。
遊戯の件も疲れているのかもしれんな。
「では3時間仮眠をとる」
「うん!その間はオレがちゃんと兄サマの代わりを務めるぜぃ!」
「モクバお前もだ」
「え?いいの?兄サマ?」
普段会社では冷たくあしらっているオレからの言葉が信じられなかったようだ。
「寝るぞ、早くしろ」
「・・・うん!兄サマ!」
何の不信も抱かない真っ直ぐな視線。
モクバに抱いていた黒い感情は今遊戯に向けられている。
だとしたら、この黒い感情は一体なんなのだ。
仮眠ベッドに横たわったオレの傍でモクバが嬉しそうに立っていた。
「・・・一人で寝るか?」
「あっ!一緒がいい!」
慌てて潜り込むモクバを見てオレはかすかに安心した。
「どうしたんだ?兄サマ」
どうやら顔に出ていたらしい。モクバが視線を外さないのでオレは「気にするな」と呟いた。
・・・オレは傍によるモクバをみて、自分の感情に安心したのだ。
コメント
ハイレモン美味しいですよね←
社長の口調が分からないです・・・。やばいなぁ・・・書き易いからバク表一直線にしようかな←
筋肉ムキムキ聞いてくる(マテ