夢幻遊戯







 次の日、ボクは川じゃなくて、ママと一緒にお墓参りに来ていた。ママの目的の一つがコレなんだ。こっちのじいちゃんが死んでからもう2年になる。実際あまり覚えてないんだけどね。もうひとりのじいちゃんと過ごしてるから。
「ちょっと、水道のあるところ聞いてくるわ」
「うん、待ってるね」
 お寺の賽銭箱のそばに座る。日陰になってて気持ちいい。
 今日もいいお天気だなぁ。川で遊んでると暑さとか気になら無かったけど。
 海馬君、どうしてるかなぁ・・・。
「遊戯ー!教えてもらったから行くわよ」
「誰かいたの?」
 物凄く静かだったから気づかなかった。
 ふと、お寺の中を見ると白っぽい髪の男の子がこっちを覗いていた。
「あの子。さっ、ほーら!」
 優しそうな子だなぁ。ここの子なのかな?



 それからお墓の掃除をして、お線香を燈して、お供えしてとかやってたら、二時間が経っていた。少し疲れたなぁ、なんて思っていると、ママがひとしきり終わったようなため息をついた。
「遊戯、帰りましょうか」
「うん!」
 墓場を抜けて入り口に向かう。寺からさっきの子が出てきていて周りを竹箒で掃除してた。
 やっぱりここの子なんだろうなぁ。私服だけど、なんか当然のことみたいにやってるし。
「大変だね」
 近づいて声を掛けてみる。にっこりと優しい笑顔で返された。
「ありがとう、でもそうでもないよ〜」
「そうなんだ、ボクならほってどっかいっちゃうぜー!」
 めんどくさいからなんて後につけてみる。なんとなくだけど、笑ってくれた。良かった。
「今日は暑いね」
「そうかな。僕はそうでもないよ〜」
「そうなんだー」
 そういえば、汗一つかいてない。すっごいなぁ〜。
「遊戯ー?」
「今行くー!じゃあまたね!」
「うん、さよなら〜」
 車に乗り込んで、大きなデジタル時計を見てみると、時間は2時だった。これなら川へ遊びに行くことができるかもしれない。
 海馬君いるかなぁ・・・。




 はっ、はっ、はっ・・・。

 森の中を駆け上る。あんまり走ったりしないからすごくしんどい。

 もう帰っちゃったかなっ。まだ、間に合うかなっ?
 もう3時くらいだもんな・・・。
 居なかったら帰ればいっかっ。

「そんなに急いでどこへ行く?」

 もう少しでいつもの川の場所ってところで、海馬君の声が聞こえた。
「海馬君っ!」
 もしかしたら帰る途中なのかもしれない。一人でこの川に居たってすることなさそうだしね。
「何かあったのか?」
「ううんっ、なんでもないよ!」
 ボクは海馬君に会えたことと、走って早くなった心臓を落ち着かせようとした。
「海馬君は・・・?」
「・・・」
 あれ?帰ろうとしてたわけじゃないのかな。
「・・・帰ろうとしていた」
 あ、やっぱり。
「ボクを待ってくれてたの?」
「・・・」
 もしかして、海馬君って言いづらいことはすぐだんまりするタイプなのかな。じゃぁ、帰ろうとしてたわけじゃないってことかな?
「ありがとう、海馬君!」
「・・・何のことだ」
「なんとなくだよ!」
 少し照れたように見えるのはボクの錯覚ってことでいい!それよりもボクを待っててくれたことが嬉しい!友達って思っていいんだ!
「今から釣りをするのか?」
 バケツと竿を持ったボクを見て海馬君はそう言った。
「うん!」
「・・・もうじき雨が降るぞ」
「えっ?」
 この時になって空を見上げた。
 薄暗い雲が木々の隙間から迫ってくるのが見えた。
「ホントだ・・・」
 ニオイも何だか湿っぽいような、水っぽいような。辺りも急に寒くなってきてた。
「どうしよう・・・」
 下ってもすぐ降ってきそうだった。
「こっちだ」
「えっ」
 パッといきなり手首を掴まれた。そのまま足早に山を登って行く。ボクはバケツと竿を落とさないようにしっかりと握った。
 ボクらは道中だんまり。だけど、海馬君が彼の家に連れて行ってくれると信じてたし、怖いことなんて一つもなかった。5分くらいが経った頃、ボクはいくつかの家を見た。丸太を組み合わせたような家や、煉瓦で造られたやつとか。
「もしかして・・・これってみんなロッジとか別荘って言われるやつかな?」
「・・・」
 ボクの質問は無視された。だからボクもなんだか聞いてはいけないことだと思った。

 冷たっ。

「あ、雨」
 葉っぱとかに覆われてたからあまり気づかなかったけど、結構降ってるのかもしれない。
「ここだ」
 それは煉瓦っぽいほうで、カードのようなもので扉をあけてる。
「入れ」
「うん・・・お邪魔しまーす」
 靴とか脱ぐところが無くて焦った。ボクが玄関でどうしようってオロオロしていると海馬君はスリッパを持ってきてくれた。
「適当に置いておけ」
 適当にって・・・じゃあ、隅にでも置かせてもらおっと・・・。
「あ」
 靴を揃えている間に電気がついた。
 中を見てみると、綺麗に・・・というよりは何も無い感じだった。キッチンと楕円形の大きなテーブルと椅子。あと二部屋あるみたい。
「一人なの?」
「あぁ」
 なんで?
 聞きたかったけど、きっと何か事情とかあるんだと思う。聞かなかった。
 向かいの窓を眺めると雨はいっそう激しくなってて、これじゃあ帰れないかもなぁ・・・。
「適当に居ればいい」
「うん、ごめんね」
「構わん」
 そういうと海馬君は二つある扉のうち一つに入ってしまった。ボクはどうすることもできないから、とりあえずバケツと竿を玄関隅に置きにいった。
 うーん・・・どこに居よう。・・・雨止むのかな?
 近くにあった椅子に座る。何もしないことほど暇なことはないんだよねー・・・。
「海馬君も部屋に行っちゃったし」
 とりあえず・・・寝て・・・雨上がったら起こしてくれるかな?
 今日は少し疲れたや・・・。



「おい、この雨はー・・・」
 海馬が天候について言おうとして扉をあけると、そこにはテーブルで定期的に肩を揺らしている遊戯が見えた。
「寝たのか」
 海馬は起こして伝えるべきか、そのままにし置くべきか考えた結果、後者にした。幼い顔が横から覗いている。
 海馬は椅子を一つ持ち上げると、遊戯の顔が見える場所に置いて座った。
 じーっと観察してみる。

 ・・・モクバではない。
 でも、どこか似ている。

 そっと、頭を撫でてみた。
 起きるかもしれない。
 そう思った海馬だが、遊戯は気持ちよさそうに寝言呟いただけだった。
「モクバは弟・・・でも遊戯は・・・」
 海馬は一瞬何かを考えたが、すぐに首を振った。
「・・・」
 
 雨脚だけは一層強く、部屋に響いた。




コメント
なんで了君でてきたのか私もわからない←
・・・出したかったんだ!だ、出したかったんだ!!

そろそろセト表かきたいな(ぁ