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夢幻遊戯






 ボクは今、いつも見てる景色とは程遠い場所に来ている。いつもなら家やコンビニ、ホテルや飲食店が並んでいて、いろんないろをしたビルに囲まれて暮らしてる。だけど、今いる場所から視界に映るのは緑。木や草、自然の音しか聞こえない場所。ママの実家に遊びにきてるんだ。ホントに久しぶり。

 実はここに来てから友達ができたんだ。

「海馬君!」
声をかけてみると振り向いてくれた。昨日近くの川で遊んでたら、たまたま見かけたんだ。
「お前か」
 またお前って言われた。ちゃんと名前教えてあるんだけどなぁ…。といっても名前だけしかまだ知らないんだけどね。海馬君は背が高くて落ち着いてるから、多分年上だと思う。
 海馬君も昨日たまたまこの川にきてたみたいで、どこから来てなんでここにいるのかわからない。
「今日は何してるの?」
「お前と話している」
「まぁ…そうだね」
 海馬君はとっつきにくいっていうか、人見知りなのかな?でも無視はされてないから嫌われてはないのかも。ここの川はサワガニとか魚とかがいて、ぼくは少し家から遠いけど、釣り体験をしにここにくるんだ。海馬君は特に何もしてないんだよね。
「一匹も釣れたところを見たことが無いな」
「そうなんだ、才能ないんだよ、ボクって」
 竿を少し動かしてみる。竹で作った簡素な竿だけど気に入ってる。
「…貸せ」
「ん?」
 近づいてきたと思ったら、ボクの竿を取り上げた。
「こら!ボクの返事を待つくらいしないの!?」
「…」
 少し間があって、それから糸の先端に付いている針を引き寄せた。海馬君は何やら餌をいじったあと、もう一度川に投げた。
「みてみろ」
「何か変わったの?」
 半信半疑で言われた通りに見ていると、ふと糸が上下に一瞬揺れた。
「あっ」
「フン…」
 その後海馬君はおもいっきり竿を引っ張ると、可愛い魚が空に舞った。
「すごーい!!」
「…」
 あれだけ昨日釣れなかったのに海馬君はあっという間に一匹ゲット。実は海馬君ってすごいのかな。
「オレにできんことなど無いわ」
 海馬君って物凄い自信家なんだ・・・。やっぱりボクと違って何でもできるんだろうなぁ。
「簡単なことだ。お前は餌で針を隠しきれてない」
「え?!」
「魚は見えていたらよりつかん」
 そう言って魚がついたままの竿をボクに返してくれた。ボクはその魚を逃すまいと、素早く掴んで針からそっと離してバケツに入れた。
「思い出の一匹だね!」
「・・・」
 海馬君はそのままその場に座り込む。さっきより距離が近い。もしかして、友達だって認めてくれたのかな・・・?
「さぁ、やってみろ」
 ボクがぼーっと海馬君を眺めていたことに気づいたのかはわからないけど、ボクにそう促した。ボクも言われてせかせかと餌をつける。どうしても綺麗に隠れる団子にはならなかったけど、なんとか隠れた。
「ボクって不器用・・・」
「最初から上手いやつなどそういない」
 海馬君は最初からなんでもできそうだけどね。
 ボクは取り合えずポイッと針を投げた。ちゃぽんという音がして静かになる。川のせせらぎの音しか聞こえない。

 ボクたち二人だけ。

 まるで秘密の場所みたいだ。








「今日はありがとう!」
「フン」
 バケツいっぱいになった魚を見てボクは上機嫌だった。海馬君はオレは関係ないとでも言った風に顔を背けてる。でも実際海馬君がアドバイスしてくれなかったら、ボクは一匹も魚を釣れなかったと思う。
「そろそろ帰らなくちゃ」
 ボクはオレンジ色の空を眺める。あ!
「そういえば海馬君はどこに住んでるの?」
「・・・ここから登ったところだ」
「そうなんだ!じゃあ結構近い?」
「そうだな」
 この山を登ったところに家があるなんて知らなかったなぁ。でもここから近いんだったらまた一緒に遊べるよね!
 ボクは山を下ることになるから正反対の道を降りなくちゃいけない。
「じゃあまたね!」
「・・・」
 あれ?会ってくれないのかな?
 そう思ってるうちに海馬君はすたすたと山へ登っていってしまった。また会おうなんていうタイプじゃなさそうだから、また来たら会えるかな。
 っと、暗くなる前に下りないと。
 裏山だからすぐなんだけど、暗くなると鹿とかたまにでるしね。あれ?海馬君の家は大丈夫なのかな・・・。


「ママー!!見て!今日はたくさん釣ってきたぜー!」
「あら遊戯、すごいじゃない。今晩のオカズね」
 海馬君が釣ったやつはおかずにしちゃいけないんだけど・・・どれかわからない・・・。
「今晩のおかずにはならない!」
「そうなの?」
 ボクはバケツをもったまま庭のほうへと向かった。そこには大きな池があって、今は何も泳いでないからそこにいれようっと。
「海馬君、また会えるかな」
 明日は会うことができないけど・・・明後日いってみよう。







―――じゃあまたね!


「・・・遊戯か」
 海馬は山の中、中腹部に存在する別荘地に一人佇んでいた。誰もいない簡素な建物。だが、生活に困ることなどない。
 開かれたコンピューターの画面がチラチラと部屋を映し出していた。
「モクバに会いたい・・・」
 後28日間のことを思うと気が遠くなりそうだった。
「・・・遊戯」
 彼のことを思い出して海馬は、モクバのことを思った。純粋な笑顔を向ける姿をモクバのようだと思いながら。




コメント
タイトルはもうこのシリーズでいいじゃない!(コラ
パラレルなひと夏のアバンチュール的な感じになるような、ならないような(ぁ