乙女遊戯
(男の会話ではありえない会話?)
「海馬君にとって僕って一体なんだろう?」
恋愛をしていく中で一度は考えてしまう悩みに遊戯はぶつかった。
今日も学校へ通う。
普段と変わらない日常がそこにあって、そしてボクの中に「海馬君」という別世界が存在するようになった。普段は手にすることができないその世界は、ボクにとって今では、なくてはならない存在になったんだ。
そう、今いる普段の世界の海馬君と、あの別世界にいる海馬君は少し違う。
別世界にいる海馬君は、ボクにとても優しくて、いつもと違う甘い声で囁いてくれて、だからボクはいつもそこにいたいと思ってしまう。
だけど、普段の海馬君は普段の海馬君なんだ・・・。
ボクをみることもないし、ボクに声をかけることもない。
見ているのはキーボードか、モニターだけ。ボクの声だって、授業でさえ聞いているのかわからない。
「はぁ・・・」
「なんだ?ため息なんかついて」
城之内君が不思議そうにこちらに向かってきた。
「ボクだってため息くらいつくんだよ」
今の気分は当然、ニコニコ愛想を振りまいている気分じゃなかった。しかも相手は城之内君だ。無理にそんなことする必要もないしね。
「困ってることがあったら何でもいえよ?」
「・・・あはは」
「なーんでそこで笑うんだ?!」
「城之内君らしいんだもん」
今の悩みなんて誰に話せるんだろう。唯一話せる相手が海馬君じゃ悩みも解決されないよ。
「城之内君って・・・」
そう言ったボクはその先を言うことを躊躇った。
「なんだよ?」
躊躇った言葉を急かすように城之内君は向かいの席に座って僕を見た。
「・・・城之内君って・・・好きな人とかいるの?」
「んなっ・・・!!!・・・まぁいるにはいるけどよ・・・」
珍しい回答にボクは驚いた。
「誰?!」
「秘密だ!」
相当真っ赤になっている城之内君。なんだよ、ボクにも教えてくれないの。って、ボクも言う気なんてないんだけどさ。
「って、好きなやつでもできたのかよ」
「秘密」
そういうと城之内君は不満そうな顔をした。ボクにだって教える気ないくせに、そんな顔しないでくれないかな〜。
「あ、そろそろ自習時間終了だな。帰り、よってくか?」
時計を見たらもうそんな時間だった。寄っていくってのはゲーセンのことなんだけど・・・。
「うーん、そうだね。暇だし!」
「お、元気になったか?じゃあ一緒に帰ろうぜ」
「うん」
ふと、今はいない席にいる海馬君を思い浮かべた。
(これって・・・浮気じゃないよね?)
二人でゲーセンに向かった。
UFOキャッチャーは実は城之内君のほうが上手いんだ。そのほかのゲームはボクが勝つんだけどね。きっと、身長に関係あるとボクはにらんでる。
「おっし、取れたぞ。ほらよ」
ウサギのマスコット人形が2つ落ちてきた。表情は違うけれどもそっくりなマスコット人形。
「えー・・・ま、いいか。鞄にでもつけておけば」
「遊戯なら大丈夫だ」
「どういう意味!」
そういいながらボクは適当に鞄につけた。まぁぶさいくな顔の人形だから、ウケるくらいで済まされるんだけどね。
「じゃあ俺はこれ鍵のやつにでもつけとくか。普段出さないし」
「ボクはいつでも家が空いてるからね〜」
そういえば鍵なんてじいちゃんが旅行に行くときくらいかも。普段ボク持ってる意味ないんだ。
「いいよなー・・・ゲーム屋だしな」
「でも、カードがもらえるわけじゃないんだし」
「なーんだ・・・」
もらえると思ってたのかな?すっごく落ち込まれた。
「お腹すいたぜー!」
「じゃあバーガーにでも行くか!俺も空いたことだし」
「うん!」
バーガーショップに入ると杏子がカウンターで愛想を振りまいていた。放課後から三時間くらいはボクたちみたいな学生でにぎわうことになる。
「あ、また来たの?」
「うっせー!いつもの」
「あーはいはい」
こんな会話で杏子となら成り立つくらい常連だったりする。安いし、ボクはハンバーガー大好きだからね。ボクは適当に席を確保して城之内君が来るのを待っている。前にボクが持っていこうとすると「俺が持ったほうが早い」と言われてそれ以降ボクが席を確保して城之内君が持ってくるという役割分担ができてしまった。
「お待たせー!またおまけしてもらったぜ!」
「なんだか悪いね」
ポテトが溢れんばかりに詰め込まれている。ボクはこうしてお腹いっぱいになって帰ってくるからママにいつも怒られてたんだ。今じゃ真っ直ぐ帰ってこない日はご飯ないんだけど・・・。
「はい」
「サンキュー」
ボクの分のお金を渡して、さっそく頂きます!
「おいしいね!」
「ほんとそれ好きだな」
呆れたような笑いで城之内君が見ていた。ジュースを口に含むと「生き返るー!」なんて親父くさいことを言う。
「そういえば、今日予定とか大丈夫なの?」
「あ、俺?んなもん、遊戯の家より適当だぜ。予定ないからここにいるわけだし」
「ふーん」
なんか自由でいいな。
「この後どうしよっかな・・・」
「帰るんじゃねーの?」
いつもならここでこうやってだらだらするか勝負して時間がきたら帰るっていうのがパターンなんだ。だけど、なんとなくボクは帰る気分じゃなかった。きっと帰らなかったら怒られるんだろうけど。
「うーん、うろつきたい気分」
「なんだよそれ」
うん、ボクだってそう言われたらそう思う。なんかいつもと違う気分だった。
「ため息の原因かな」
「よくわかんないけど、俺もついていこ」
「なんで?」
「遊戯一人じゃなぁ・・・」
城之内君って時々ボクのこと過保護扱いするんだよね。まぁ心配されても仕方ないくらい喧嘩とかできないんだけど・・・。
「じゃあボディーガードってことで」
「おう!」
「冗談だよ」
「わーってるって」
そう言ってボクたちは当てもなく堂実野町を歩いた。いつもは通らない道をわざわざ通って知らない公園を見たりしたんだ。犬に吼えられて驚いたり、海馬君以外の豪邸なんかもみてなんだか知らない街に思えた。
「このまま行くと港かな」
「あー、だな。行くか?」
「そうだね」
だんだん辺りも暗くなってきて、灯台の明かりや、橋のイルミネーションがはっきりと見えるようになってきていた。
「うわー・・・綺麗だね!」
「デートスポットらしいぜ」
遠くに見える町並みの明かりや小波の音がボクにはなんだか心地よかった。海間近の所で座り込んで、後ろに手をついて星を見た。
たくさん見えるわけじゃないけど、それでも強く光ってる星がきらきらと光っている。
「星、綺麗だね」
「あんま見えないけどな」
隣に同じように座り込んだ城之内君も上を見上げた。ふわっと風に揺れた城之内君の髪がなんかカッコよく見えた。
「やっぱ海だな・・・香りが」
「そうだね〜。少し離れててもわかるしね」
髪がうっとおしいのか掻き揚げる仕草にボクはまたドキッとする。ボクは今日はおかしいのかもしれない。城之内君に誘われるその前から。
(城之内君と一緒にいるのに浮気だなんて考えるんだもんね・・・)
「遊戯」
「ん?」
ふと城之内君のほうを見ると、しおらしい表情の城之内君がこっちを向きながら、地面を見ていた。
「どうしたの?」
「あ・・・いや、何でもねぇ・・・」
「なにか言いたいことあるならいってよね」
「あー・・・学校で言ってた好きな奴ってさ」
いきなりの切り出しにボクは一瞬なんのことかわからなかった。
「まぁ、いるわけなんだけどよ・・・」
あ、なるほど!恋愛話をボクに持ちかけているのか。
「うんうん」
「なんか・・・落ち着くって言うか、守ってやりたいって言うか・・・傍にいたいと言うか・・・だぁー!!なんて言えばいいんだ!」
「わかるよ、その気持ち。一緒にいると温かいんだよね」
「って、遊戯もすきなやついるんじゃん」
「うん、まぁ・・・」
こうなったら隠しても仕方ないので、いるということにした。そのほうが城之内君に言いやすいだろうし、城之内君も安心するだろうし。
「振り向いてほしいんだけど、どうしたらいいかわからない」
「おう、同じ同じ」
「ボクのこと少しでも考えてるのか不安になる・・・」
「そうそう、友達どまりなんだよな」
「・・・杏子?」
友達がボクらの中だけにいるかわからないけど、友達どまりってことは・・・。
「な、あいつなわけねぇーだろ!!」
「怪しい・・・」
「マジで違うからな」
「ふーん」
ボクが怪しそうに見つめると城之内君は慌てた。面白い・・・。
「だいたい、杏子は遊戯の兄が好きなんだろ?」
「そうだけど」
「それに俺はあんな怖そうなのはごめんだぜ」
じゃあおとなしい子なんだ。うーん、だれかいたかな?
「まぁ、誰だと言うのはお互いに秘密でいいじゃねーか。遊戯だって言いたくないんだろ?」
「言ってもね・・・」
「誰だかわからないってか。ほうほう」
「そういうことでいいよ」
その後ボクらはまっすぐ帰った。なんだか楽しかったせいなのかもしれない。当然もう一人のボクには心配されて怒られたけど、それ以上に不思議な気分だったんだ。
それからしてボクらはちょこちょことあの港へ行くことが多くなった。たまに場所を変えてみたりするんだけど、やっぱりあの港へ戻ってしまう。
落ち着く先を見つけて二人だけの恋の話が盛り上がっていた。
互いに誰を好きなのか言わないまま・・・。
コメント
ドロドロになる予定www
あ、海馬の性格がツンデ・・・(ry とわかる人にはわかるww
兄は登場しませんのであしからず。