キャベツと紅葉





 最近、よく学校に通ってくる海馬君。
 黄緑色の髪に皆とは違う白色の学ランに猫のような金色の瞳。
「やぁ、おはよう。遊戯君」
「お、おはよう・・・海馬君」
 何故かボクのところへわざわざ来て挨拶を不気味素敵な笑顔で交わしてくれる。ボクはちょっと戸惑いながらも少し日常のこととかを話したりするんだ。城之内君は「近づかないほうがいいぜ!遊戯!」なんて言うけれど、笑顔で挨拶してくるだけなのに嫌ったりするのは変だと思う。

「遊戯君」
「うん?」
 お昼休み、豪華な昼食がセットされていく海馬君の机(二つ分)の斜め前の窓際に座って一人御飯を食べていたボクに海馬君は話しかけてきた。今日は杏子も城之内君も本田君もみほちゃんもそれぞれの用事があって一緒に食べれなかったんだ。
「一人ならこっちで一緒にたべないかい?」
 にっこりと微笑まれて、びくっと肩が震える。
 どうしてだか、ボクはこの笑顔に警戒心を覚えてしまう。ボクたちの過去に色々な事件とかあったけど、その時は何も感じなかったのに。
「う、うん。そうだね」
 断る理由もないから机を寄せて近づいていく。ほんの少しの警戒心がそうさせたのか机と机の間には数ミリの隙間が残っていた。
「遊戯君一人だなんて珍しいね」
「皆、用事があるみたいなんだ」
「そうなんだ。今日はラッキーだな、こうして遊戯君と一緒に食べれるんだから」
 きっと彼の言葉に他意はないと思うんだけど、言葉の端々に神経を使ってしまう。もう一人のボクはいま鞄の中にしまってあるからかもしれない。
「そういえば最近、前髪が少し伸びたかな?」
「それってボクのこと?」
「うん、どこへ切りに行ってるんだい?」
 そういえば前髪伸びたかな。って海馬君よくそんなところ見てるね・・・。
「じいちゃんに切ってもらってるからなー」
「へぇー・・・おじいさんが・・・・」
 この意味深な間は何なんだろう・・・。ボクおかしなことでもいったかな。
 海馬君はじーっとボクの髪を見ていると「あ、」といってにっこり微笑んだ。
「キミの髪伸ばし続けたらその形を維持できるのかな。それともしおれてくるのかな。今度やってみないかい?」
「えぇー・・・」
「僕キミの髪型気になってたんだ!」
 気にならないでよ。
「しおれてきたら切ったらいいんだしね」
 しおれるって、キャベツじゃないんだから。
「楽しみだなー・・・」
 ってなんか決定事項になってるし?!やめてよ、もう。
「キミも茶色に染めてみたら?ボクとっても似合うとおもうよ!」
 そして枯れたキャベツって呼んで見よう。
「え?そう思うかい?君がそういうなら今度してみるよ!」
「ボクとっても楽しみだぜー!」
「フフフ・・・僕もだよ」




 こんな会話誰が真に受けると思う?ボクだってさすがに本当に実行なんてしないよ。だけど翌日からなかなか現れなかった海馬君が翌週、別人になって現れたのはボクもびっくりした。性格だって変わってるんだもん。
 でもそんな海馬君をみると警戒心が無くなったんだ。反対に憧れるような人になっちゃっててもう一回びっくりした。まぁこれは別の話だけどね。


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海馬君は思春期なんです。(どんなコメント