※これは【黒執事】のパロディです。
『その執事、有能?』
堂実野町の郊外にある屋敷住まう名門貴族、武藤家。
当主の朝は一回目の・・・デュエルから始まる。
「今度こそ貴様に勝つ・・・!!!」
「当主のオレに勝てるとでも思っているのか、笑えるぜ!」
当主と執事、もといユウギと瀬人は互いにカードを取り出し、デュエルディスクを構え始める。互いの視線が合わさった時、デュエルは始まった。
「「デュエルっ・・・!!」」
「クッ・・・またユウギに敗北してしまった・・・」
武藤家の長い廊下を黒い燕尾服の裾を派手に揺らしながら瀬人は悔しそうに舌打ちした。今日で通算15敗は確実だ。
しかし遊んでばかりもいられないもので、負けた後は当主の身支度、スケジュールの管理、朝食の用意をしなければならなかった。
「朝食は本来オレの仕事ではないのだっ・・・!!」
忌々しげに当主の顔を思い出すと、シェフを怒鳴りつけにいこうと歩みが速くなった。厨房の扉を力任せに勢い良く開けると、本来ならば起こりえない、爆発のような音が同時になった。
「ふぅ〜、また失敗しちまったぜ・・・」
困った顔で汗を拭きながら、その残骸のあとを見つめてる。
「失敗しちまったぜ・・・と言う言葉は何度聞いただろうか・・・凡骨ッ!!」
「ゲッ・・・」
凡骨、もとい城之内は声のするほうへ振り返った。煙の中のシルエットでもそれが誰だか判断できる。
「か、海馬・・・いたのかよ・・・」
「貴様がシェフなどとオレは断じて認めんぞッ!とっとと辞めてしまえ!」
煙が無くなり、瀬人の形相が次第に露になってくる。城之内はまずいととっさに判断した。
「お、俺、ちょっと用事を思い出しましたー!!そ、それじゃー!!」
「き、貴様!!待て!」
(待てといわれて待つ奴なんかいねぇよ!)
厨房の裏口からものすごい勢いで走っていくと城之内の姿は見えなくなっていた。逃げ足だけは速いなと一人厨房に残された瀬人が見たものは、真っ黒になったよくわからない物体だった。
「あいつが当主でなければ辞めさせれているはずなのだ・・・」
てきぱきと厨房の後片付けをする瀬人。いつもこの始末を片付けるのは瀬人の役目になってしまっていた。片づけをさせようものならばよりひどいことになるのは目に見えているからだ。
粗方片付け終わると、今度は庭のほうへと向かった。今夜はここである方を招いた夕食会が開かれるからだ。
「ここは何もなければいいがな」
大分偉そうにまた長い廊下を歩いていく。庭へと出る通路に差し掛かったとき、この世のものとは思えぬ叫び声が聞こえてきた。
「何があった!!」
「うぅ・・・」
庭に駆け寄ってみた光景は綺麗に咲いていたバラの花が全て無くなっている状態のガーデンだった。
「き、貴様・・・」
「僕の指が、僕の指が・・・」
「貴様!!たかが棘に刺さったくらいで花を抹消するな!!」
しくしくと涙を流しているのは(嘘泣き)武藤家の庭師である獏良だった。たまに髪が耳が映えたように見えたりするときは厄介な問題を起こす二重人格者だったりする。
「僕が怪我をしたのが“たかが”だって・・・?」
ある意味、普通の時であるほうが厄介なのも否めない。
「に、庭を元に戻しておけ・・・!!お、オレは用事があるのだ!」
なにやら不穏な殺気を感じた瀬人はそれだけ言うとすぐにその場から引き返した。いつもは笑顔な庭師だが、その笑顔がたまに人を殺せそうな顔になるなと瀬人は思っている。
次に向かったのはリネン室だ。今頃きちんとメイドが仕事をしていれば、洗濯を終えて掃除に勤しんでいるはずだ・・・が。
「オレしゃまとしたことが、分量まちがえちゃったじぇ・・・」
泡だらけのリネン室のなかにメイド?がいる。
「・・・どうやったら洗剤の量を間違えるんだ・・・貴様!!」
「俺様にもわからないじぇ」
てへっと可愛くこぶしを頭に当てるマリクは、すごい速さで瀬人に放り出された。
「貴様は掃除でもしていろ!!」
「しかたねぇ〜」
マリクはえっちらおっちらとマイペースに掃除道具入れに向かって歩いていった。その間に瀬人はリネン室の掃除と洗濯物を干しに行く。ピンッと張られたロープの上から洗濯物が見事に干されていく。全てが干し終わった瀬人は満足げに腰に手を当ててその並びの美しさを見ていた。
「ふつくしい・・・しかし、疲れた」
まだ朝だというのにこの執事の仕事は多忙である。自分の仕事をほとんど出来ぬまま、日々が終わることもしばしばだ。
「フゥン・・・こんな時は、あやつに会うのが一番だな」
早歩きで中庭のほうへ向かっていく。まだ庭師が来ていないのか昨日のままの美しい庭が広がっている。そこにいるのは一人の少年であった。
その姿を見つけるとすばやくその身体を抱きしめる。
「うわぁ!」
「はぁ・・・」
「か、海馬君」
そう呼んだのは何故かこの庭にいつもいる遊戯と名乗る少年だった。当主にそっくりの容姿だが、雰囲気がまるで異なる。澄んだ紫色の瞳は瀬人の癒しでもある。
「驚かせてしまったな」
「ど、どうしたの?」
「・・・なんでもない」
そういうが抱きしめている腕は一向に離さない。
遊戯が他の誰かに存在を知られていないところをみると、他者の目には見えぬ存在なのだろう。
(他の“もの”には見えぬとは・・・オレにとって都合の良いことだ)
「今日も嫌なことでもあったの?」
「役立たず共が騒いでいただけだ」
そんな話を聞いてクスっと笑う。そんな表情も愛しくてついここを離れたくなくなる。しかし、執事としての仕事はまだたくさん残っているので、早々ゆっくりここに居られるわけも無かった。
「すまない」
すっと腕が離れると一瞬寂しそうな顔を向ける遊戯。そんな彼の表情を見ていつも躊躇してしまうが瀬人はなんとか踏み留まっていた。
「また、すぐに来る」
「うん!待ってる!」
笑顔を見せてくれたことを確認すると、そっと扉のほうへ向かった。静かにその扉を開けると瀬人はまた多忙の日々へと戻っていくのだった。
コメント
無理がありましたね。ごめんなさい。たくさん反省していますorz