50、信じてる






 馬鹿みたいだ。いや、実際あいつは馬鹿だ。
 いつだって僕を、信じているんだから―――。



「リオン・・・」
「なんだ?」
 ファンダリアへの雪道、ふとかけられた声。
「ううん、ただリオンがとっても綺麗だったから」
 そう言って微笑まれた。釈然としないコメントに僕は不機嫌になる。
「どういう意味だ」
「リオンが雪みたいだってこと」
「ふんっ」
 僕はさっきより早足で進んでいく。
「怒った?」
「・・・」
 黙ったままの僕にスタンは駆け足で近づくと、申し訳なさそうな顔をした。
「そうだよね。綺麗ってごめん」
「・・・」
「雪みたいに消えないよな」
 しばらく沈黙の中歩いていた僕は、足音が一つ消えていることに気がついた。振り返ると遠くのほうでスタンが突っ立っている。
「何をしている!行くぞ!」
「・・・」
 今度はスタンがだんまりで一歩も踏み出そうとはしない。
「置いていくぞ」
「・・・俺、何だか怖い」
「何が?」
 仕方なくスタンの元へ戻ると小さく何かをつぶやいた。
「・・・リオン、消えないよな?」
「・・・何を」
「このままファンダリアに着いたらリオンいなくならないよな?」
「馬鹿なことを言うな。早く行くぞ」
 僕は腕を引っ張って無理やり連れて行く。ここで死なれたらあと味が悪いし、一応ディムロスのマスターだ。炎が出せる便利な奴だ。
「僕には任務がある。お前を監視することが。それまでは死なない」
「・・・うん」
 納得したのか、また歩き出した。道ともつかないこの雪の中、僕らはファンダリアを目指す。
「あいつら今頃電撃でも受け続けて死んでるのかもな」
「!!・・・早く帰ろう」
「わかったなら早くしろ」
 歩く早さがだんだんと早くなって、スタンに追い越された。僕が少しムキになりながら追い返すとスタンは笑った。
「さっきの言葉、信じてる。だから俺、ずっとリオンに監視されててもいいよ」
 そういうと思い切り走って前方へ行ってしまった。
「あのバカめ」
 悪態を付いた僕は、仕方なくスタンを追っていった。
「監視役なんてごめんだ・・・」
 そういいながらも僕の心は何だか嫌がってなかった。何故だかはわからない。ただの気まぐれかもしれない。

 でもこの任務がなければ僕はこのときでさえ、あいつの命令でこの世界に起こる最悪の結末の加害者になっていただろう。そう思えば、スタンというやつに救われているのかもしれない。
 そして今も、スタンのあの言葉一つで僕は・・・。







コメント
予知ができるスタンw
ジューダスともリオンとも取れますね・・・。