49、いつもどんなときも
――本当はめちゃくちゃ嬉しかったんだ。
――嫌いじゃなかった。
だから、もっと、言って・・・?
「さっさと来い、ほっていくぞ」
最初からパーティに入って強引にリーダーシップ発揮して、俺の存在が空気になるくらい輝いていた。
「ほってったらこいつ死ぬわよ?」
「知るか」
冷たい言葉で始まって、冷たい言葉で終わる。優しさなんて微塵も感じさせなくて、それでもあの時の俺はお前と友達になりたかった。
「お前はホントにバカだな、スカタン」
「スカタンってなんだよ!」
俺にあだ名がついた。もちろん罵り言葉だけど、名前すら呼ばなかった彼から聞けるなんて大きな進歩だ。そりゃあムカつくけど、それ以上に嬉しい。
「僕はお前みたいな能天気で馴れ馴れしい奴は大嫌いだ!」
これは名台詞だよな。最初言われた時は相当ショック受けたんだけど、この言葉の意味を理解するまで時間がかかったんだ。ようするに照れ隠しだよな?それに気づいてからは俺すっげー嬉しかった。気持ちは伝わったんだなって、やっと友達になれたんだなって。
でもいつの間にかその言葉達は俺の傍から消えていたんだ。
「お兄ちゃん?ぼさっとしてないで手伝ってよ!」
「んー?あぁ」
妹に怒られた。でもこれじゃあ何も感じないんだ。
「ほんと、最近だらしないんだから!」
どんなに言われたって、あいつから言われた言葉じゃなきゃ。
「ナイト気取りか?カッコイイね」
久々に言われた。でもこんな形で言われたくなかった。ナイト気取りじゃない、俺はお前のほうを止めたかったんだ。
もっと傍で罵られてもいい、お前から聞ける言葉をもっと聞きたかった。
でも、今は・・・。
「お前より、美しいものなんて、どこにもいない。安心しろ」
「よく、そんな台詞言えるな・・・」
今はあの言葉達を聞くことは出来ない。代わりに歯の浮くような台詞は毎日聞けるんだけど・・・。
「はぁ・・・、リオン変わったよな」
「当たり前だ。前より背も伸びたし、なによりお前が傍にいるじゃないか。これで僕が昔と同じ様なら今ここに僕がいるわけが無い」
「昔のリオンは口悪かったよな・・・」
「なっ・・・。すまない・・・」
そういうことを言わせたいわけじゃないんだけどな。
「なんだ?そんなにショックだったのか?」
「もういいよ」
罵られても本当はめちゃくちゃ嬉しかったんだ。
嫌いじゃなかった。
だから、もっと、言って欲しかったんだよ。
コメント
Mなスタンを目指し・・・・きれませんでした。