48、約束だよ
それは遠い遠い日の約束。
「またダリルシェイドに来るか?」
「うん、うん」
黒髪の男の子と金髪の男の子が港の塀によじ登って綺麗な海を見つめている。
「じゃぁ、次はおいしいぷりんの店教えてやるっ!」
「ありがとうぉ〜」
きゃっきゃっと喜ぶ顔を見て、黒髪の男の子は小指を向けてきた。
「小指だせ」
「うん?」
言われるままに同じように差し出すと、ゆびきりげんまんと黒髪の少年は言った。
「約束だぞ」
「うんっ!」
また嬉しそうに笑う金髪の男の子を見て、黒髪の少年は同じように微笑んだ。
「リオ〜ン!」
「僕の名を大きな声で呼ぶな、スカタン」
武器やに剣を売りに行った帰り道、スタスタと歩くリオンは少し不機嫌だった。
「なぁー港行こう!」
「何故?」
「屋台、御飯」
「一人で行け」
そう言われてぷぅーっと頬を膨らましたスタンは、ちぇっと顔を外向けた。
しばらく経って黙り込んでいたスタンが口を開いた。
「そういえば、昔よくここで遊んでたんだ。母さんとか父さんが居た頃だけどね」
「そうか」
「それでさ、リーネ村から来てたから遊ぶ子が居なくてさ、母さん父さんも忙しかったし。港で一人で遊んでたら、男の子がいきなり声をかけてきたんだ」
「・・・」
「それからちょくちょく遊ぶようになったけど、母さんも父さんも死んでからはここらへん来なくなったんだ。だから港にちょっと寄ってみたかった」
「そうか」
リオンは歩く速度を少し緩めた。
「スタン、来い」
「え?なに?」
いきなり大道路からわき道に入ると、迷路のような道を歩いていく。
「何?何があるんだ?」
「じきにわかる」
迷路から抜け出た先は、一つのレストランだった。
「ここ?」
「そうだ」
リオンがいつも行くような大きなレストランではない。どちらかというと少し寂れた印象を抱く外観である。スタンは「御飯」と言ったから気にして連れてきてくれたんだろうと思った。
「ありがとう」
「ふんっ」
中に入ると、そこには少し年老いた老人が立っていた。
「いらっしゃいませ・・・り、リオン様」
「久しぶりだな」
「ささ、お座りください、さ、ご同行の方も」
あんなされた席に座ると、リオンはメニューも見ずに老人に何かを伝えた。それで理解したのか去っていく老人を見てスタンは首をかしげた。
「どうなってるんだ?」
「少し待て」
リオンに言われたとおり、しばらくの間待っていると、小さなカップが運ばれた。
「・・・蓋開けてもいいの?」
「ああ」
かぱっと蓋を開けると、その中身はプリン。
「プリン・・・」
「どうした?食べないのか?」
蓋を開けたまま固まっているスタンをよそにリオンはぷりんを口に運んでいく。
「リオン?リオン!」
「うるさい」
「く、黒い髪、プリン、口の悪さ・・・」
「早く食べろ」
「う、うん」
言われてすばやく口に入れると、仄かな甘みと、香ばしい蜜の味が口に広がってくる。
「おいしい!!」
「約束だからな」
「・・・やっぱり」
「そうだな」
スタンは満足げな笑みを浮かべると残りのプリンを味わった。リオンもそんな彼を見て苦笑する。
「気づいてたの?」
店から出たスタンが質問した。
「お前がさっき言ったから思い出した」
リオンはまたスタスタと歩いていく。
「年上だと思ってた!」
「年下だと思ってた」
「昔は背が高かったんだ〜」
「お前が小さかったんだ」
そんないい合いをしながら二人は宿へ戻っていった。宿につく頃には思い出話になっていて、そんなことを言い合う二人を見て他の仲間が不気味がっていた。
コメント
話のネタが尽きてくる今日この頃。同じパターン化してもいいですか。