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46、ぬくもり
「相変わらず、ここは寒いなぁ~」
スノーフリアの七不思議、凍らない港に着いたスタンとリオンは、真っ白な雪景色をみて感嘆の声を漏らした。ハイデルベルグには当時共に戦ったウッドロウ・ケルヴィンが王として治める国がある。
「あれから4年か・・・」
英雄として帰ってきた彼らに待ち受けていたのは、安らぎのひと時ではなく多忙の毎日であった。空中都市の際、被害にあった街は少なくない。そんな街の復興作業を手伝ったりして多くの時間が過ぎていった。
「ウッドロウさんに会う?きっとエミリオみたら驚くだろうな!」
久しぶりの再会に期待して笑顔が溢れてくるスタン。リオンは照れた顔をした。
「その名前、ウッドロウ王の前では言うな」
「えー、こっちが本当の名前だろー?」
「お前が知っていればいい。スタンだけでいい」
「わ、わかった。そ、そういうことをさらっと言わないでください・・・」
照れたスタンを置いて、スタスタと街のほうへ歩いて行ったリオン。20歳になり、少し大人っぽくなった彼をみてドキッとする婦女子が絶えないが、スタンもリオンも一向に気づいていない。もちろん、23歳になったスタンも相変わらずの容姿で、最近ではどちらが年上なのか年下なのかわからないくらいだ。
「この辺りは被害が少なかったな、そういえば」
「ああ、奇跡的にな」
やっと追いついて横に並んだ二人の身長差もほとんどなくなってしまった。
「今日は泊まるか?」
「そうだね。日暮れ近いし、会うにしても明日かな」
現在二人は念願の夢の旅をしている。未開の地に旅立ってみたいという思いはあるが、まず4年後の世界の都市はどうなっているんだろうという発案の元、今こうしてスノーフリアに来ていた。
宿に向かった二人はさっそくチェックインした。部屋には暖炉があり、暖かく薪が燃えている。重い鎧や武器をテーブルに置くと、スタンは思い切り伸びをした。
「はぁ~やっぱ船旅は疲れちゃうな」
「そうだな」
「エミリオの場合、酔ってるからだろ~」
「うるさい」
リオンもシャルティエを置くと、椅子に腰掛けた。
「これからどうするんだ?夕飯まで少しあるけど」
「防寒具買いにいく。今はいいが、ティルソに行くのはきついからな」
「俺も行く!武器どうする?」
リオンは一瞬悩んだ。
「そうだな、まぁ、僕達なら大丈夫だろう。それに、街の中だ」
「わかった。この服で外に出るのは寒そうだ」
「そのために買いに行く。さっさと行くぞ」
装飾屋雪景色に入った二人はさっそく防寒具を見つけた。マネキンに着せられたものや、棚に並べられたものを見てまわる。
「エミリオにはコートってのが似合うんじゃないか?」
「寒さが防げるとは思えない」
真っ黒な生地のロングコートは明らかに薄そうに見えた。
「着てみないとわからないって!」
そう言われて渋々試着したリオンは、思ったより暖かいので驚いた。
「中は風が通らないのか」
「お客様、それはオーグルベアの皮で出来ていて、中は毛皮ですから大変暖かいです。いかがですか」
「ほらほら!」
店員の勧めもあり、リオン自身がこのコートの動きやすさと暖かさを気に入って購入することにした。
「なら僕はこれを」
「ありがとうございます」
店員にコートを預けると、今度はスタンの防寒具を見てまわる。
「何か良いのあったか?」
「じゃじゃーん!これどう!」
バッとスタンが見せたのは大きな羊のきぐるみだった。明らかにリオンが呆れた顔をしている。
「スタン、真面目に選べ。それで戦えるというなら別だが」
「無理だ!・・・ごめん」
「分かってるなら、戻して来い」
残念そうに返しに行くスタンを見ていると、ふと目に映る白いロングコートを見つけた。
「白もあるんだな」
「ん?なになに?あーこれ?白はエミリオのイメージじゃなかったからさ」
「お前がこれでいいんじゃないか?」
「そーかな?」
「よく似合うと思う。特にその髪の色には」
そう言われてスタンは即行でそのコートに決め、満足気に二つのコートを購入した。リオンは試着すらしなかったスタンに苦笑したが、何も言わなかった。
「お揃いだな!」
「色が違う」
「はいはい」
上機嫌で戻っていくと購入したコートをテーブルに置き、ベッドになだれ込んだ。
「ふぅ~、夕飯までちょっと休憩ー」
「寝るのか?」
「いや、ゴロゴロ」
「珍しいな。外に行かないのは」
「寒いのはさすがに苦手なんだよな~」
もぞもぞと布団の中に入ると、自然に瞼が落ちる。
「スタン」
「ん?」
呼ばれたかと思って目を開けると、目の前にはリオンが居た。
「僕も疲れたから寝る」
「うん、一緒に寝るぞ~」
眠たげな声を出して引っ付いてくる。
「あのコート、暖かかった」
「うん・・・」
「でも、スタンとこうしてるほうが、暖かいな」
「うん・・・」
さらりと髪を撫でてやると、すぐに寝息が聞こえてきた。リオンはその寝顔に微笑みながら、髪を上げて頬にキスをする。
「このぬくもりがあるから僕は生きていられるんだ、スタン」
そっと肩を抱くと、リオンも瞳を閉じた。
「愛してる、そしておやすみ・・・」
「りおぉーん!!!」
「な・・・なんだぁ・・・?」
いきなり起こされたリオンは少し不機嫌気味だった。
「夕食の時間、とっくに過ぎた!」
「だからなんだ、フロントにでも夜食を頼めばいいだろう・・・僕をそんなことで起こさないでくれ」
「あ、そっか」
「寝る」
コメント
なに?そんな落ちがないと私は終われないのか。(そうです