44、星屑の願い








※お題「すれ違う二人」のつづきです。








 翌朝、俺は久しぶりに憂鬱な気分で目が覚めた。
(勝手に入る俺が悪かったよなぁ・・・)
 ため息をつきながら反省。憧れのリオンと一緒に居られることに舞い上がっていたのが原因だ。それに友達が出来たって思ってたんだ。
 長い髪をかき上げてベッドから降りる。
(とりあえず風呂にでも入ろー・・・)
 ・・・考えるのは苦手だな。

 乳白色のタイルで覆われた少し古めかしい風呂に浸かりながら、俺は今日のことを考える。
(ウッドロウさんに行くって言っちゃったし、リオンが嫌なら無理に連れて行かせるのはやめておこう。もしかしたらもう俺のこと嫌いになっちゃってるかもなぁ・・・。)
 またため息が出て浴槽から出た。長ったらしい髪を洗ってもらい、次に身体を洗ってもらってまた浴槽に浸かる。15分くらいすると考えすぎたのかのぼせて来たのであがることにした。

「考えても仕方ない!」

「「!?」」
 髪を乾かしてもらってる真っ只中で叫んだのでメイドさんに驚かれた。
「あ、ごめんなさい」
 とりあえず謝っていたら反対に恐縮されちゃったよ・・・。
 髪をくくっていざ食堂へ!この時間は結構楽しみ、なんだけど今日はちょっと憂鬱。
 扉を開けるとやっぱりリオンが先に座っていた。
「おはよー」
 いつものようににっこり笑えているか心配だけど挨拶挨拶。・・・どうやらリオンはダンマリを決め込むようすみたいだ。
 朝食が届けられる。いつもマリーシェフの作る料理はとってもおいしいんだよ〜。俺はこの時だけは料理に集中しちゃうから言葉数が減るんだよな〜。リオンにとって今はそのほうがいいのかもしれないけどさ。
「昨日の話だけど、リオン行きたくないなら無理にとは言わないよ」
 リオンは動かしていた手を止めると黙ったまま料理を見つめる。多分考えてるんだと思う。ちょっと経ってから返事が返ってきた。
「僕も行く」
「うん!」
 どういう考えでであったとしても、良かった。
「アタモニ格闘場はとっても綺麗なんだよ。俺も数回しか行ったことないけどね」
 リオンはそれを聞いていたのかわからないけど、俺はちょっとほっとしていた。

 食べ終わった後、とりあえずディムロスを装備して馬車に乗る。リオンは慣れない様子で俺の後に続いて乗り込んだ。途中でバッカスを発見したけどこっちに気づいてない様子だった。バッカスとは幼馴染だけど、彼は勉学に忙しくて最近かまってくれないんだよなぁ。俺と違って賢いし、剣術に向かないみたいだし。
「リオンには兄弟いるの?」
 パッと振り返ってすぐに視線をはずした。まずかったのかな・・・。
「姉が居るらしい」
「らしいって?」
「会ったことはないからな」
「そうなんだー」
 兄弟が離れ離れなんてつらいだろうな。俺がリリスと会えなくなるようなことがあったら俺どうするんだろ・・・。でもリリスももう15歳だもんなー。好きな人とか出来て結婚したら出て行かなきゃならないし。あ、リオンと付き合えば一緒にいられるのにな〜。二人が好きになったらいいのにな〜。えっと、そういえばリオン何歳だっけ?
「今、何歳なんだ?」
「・・・多分16歳と思うが」
「え、ぇぇええええええ!!!!」
 驚いたことに驚いたのか、目を見開かれてから不愉快そうに目を細めて窓のほうを見られた。
「俺、てっきり同じくらいかと・・・」
「お前が子供っぽいからな」
 身長が低いだけかと思ってた・・・。ほらほらいいもの食べてないから育ってないとかそんなんだと・・・。あ、にらまれた。心でも読まれた!?
「お前は?」
「俺?19・・・」
 ため息が聞こえる。そんなに俺って子供っぽいのか。
「19歳なら結婚しててもおかしくない」
「そうなんだけど、考えたこと無いから」
 またため息が聞こえる。たまに見るリリスのようだ。視線が痛い・・・。
 でも16歳ならリリスと歳も近いし結婚してもおかしくないよな〜!そしたらリリスも一緒に居るし、リオンもずっと一緒に居られるし!
「想像中のところ悪いが、アレが目的地か?」
 リオンの指した方向には城のような大きな屋敷が見えている。
「そうだよ。ウッドロウさんのお屋敷だよ」
「・・・」
(久しぶりだな〜ウッドロウさんに会うのは)
 ・・・そういえばウッドロウさんは独身だったはず・・・。




「ウッドロウさ〜ん!お久しぶりです!」
 馬車を降りるとウッドロウさんが出迎えてきてくれた。本当に優しい人だ。
「おはよう、スタン君。例の彼は?」
「来てますよ!」
 俺の後に続いて降りて来たリオンに手でこっちこっちと呼びかける。気づいてすたすたと寄ってきた。
「初めましてウッドロウ・ケルヴィンだ」
「初めまして、リオン・マグナスだ」
 リオンは不機嫌そうに挨拶したけど、ウッドロウさんは笑っていた。これが大人っていう差かな?
「ウッドロウさんが俺をリオンにあわせてくれた人なんだ。こっそり闘技場に行ってね、あの時思わず声かけたんだ」
 リオンは納得した表情を見せた後、ウッドロウさんを見た。さっきよりは普通の顔をしているように見える。
「今日案内するところは、君が居た闘技場とは少し違うところだ」
「そうそう!」
「さっそく行こうか」
 ウッドロウさんが用意してくれた馬車に向かう。少しはなれたところを歩くリオンはさっきから不機嫌で何が不満なのかと少し気になる。ウッドロウさんはというと機嫌が良いみたいでリオンのことを質問してくる。
「彼とはうまくいってるのかい?」
「それが昨日の晩嫌われたみたいです・・・」
 それが以外だったみたいでウッドロウさんは「え?」と一瞬驚いた顔を向けた。
「俺の勘違いで、リオンの部屋に勝手に入ったりしてたら怒られて・・・」
「はっはっは、そういうことか」
 何がおかしいことなのかわからない。
「まぁそれは礼儀としてなっていないが、初めから勝手に入ったわけではないだろう?」
「ええ、まぁ・・・」
「私達とは暮らしていた世界が違うかったんだ。いきなり親しくされたり、優しくされたりすることに不安を感じたのではないかな?」
「・・・そうなんですか?」
「信じたら裏切られたといった体験をしてきたらそうなるものだと私は思うよ」
 ウッドロウさんの知識はいつもすごい!感心するばっかりだ。
「そうですね!なんとか俺、仲良くできるようにがんばってみます!」
「その意気だよ。スタン君」
 そう言い終わる頃には俺たちは馬車についていて、アタモニ闘技場を目指して出発した。俺の馬車よりも一回り大きく、三人乗っていても余裕がある。リオンと俺が隣で向かいにウッドロウさんが座っている。
(リオンさっきからダンマリだな・・・)
 一方の俺たちは剣について話し合っている。ウッドロウさんの剣はイクティノスと言うらしい。ウッドロウさんの剣術を俺は見たことがない。狩りで会った時は弓を使っていたし。
「弓術と剣術どっちが得意なんですか?」
「私は弓のほうが好きだな。剣は人並みを超えないらしい」
「そうなんですか〜」
 少し残念だ。でも謙遜してるだけで結構上手かったりするんだよな〜この人は。この前もりんごの皮をするする向いてたし、ナイフ投げてウサギ獲ったり。
「今日もし時間が合ったらお手合わせできますか?」
「私と?もちろん、君が相手だと役不足かもしれないがね」
「そんなことないですよ〜」
 そんなことを話していたらあっという間についてしまった。真っ黒な壁がどんどん近づいてくる。門には兵士をかたどったイミテーションが槍をもって立っている。
「変わりませんね」
 ちらっとリオンを見るとさっきより格段に不機嫌な顔をしていた。おかしい。
「嫌だったのか?来るの」
「話しかけるな・・・うっ・・・」
 手で口を覆った。どうやら乗り物酔いらしい。まさかそんなことだなんて思っても見なかった。
「馬車を降りて歩こうか」
「そうですね」
「・・・」
 ウッドロウさんが気を遣ってくれたおかげで、俺たちは馬車を降りた。闘技場の中まではほんの5分程度だ。今から見たら不機嫌そうじゃなくて顔色が良くない気がする。それに少しゆっくり歩いていた。
「気がつかなくてごめんな」
「・・・」
 話すと吐いてしまいそうなのか返事が無い。しばらくの間そっとしておこうと彼の傍を離れた。
「大丈夫かな」
「大丈夫だろう。歩いていれば直に治るよ」
 にっこりとスマイルで答えてくれたウッドロウさんをみるとそう思ってしまうから不思議だ。
 中に入るころにはリオンは少し良くなったのか足はふらつくことは無かった。
「ひさしぶりだなー」
 中は外壁とは違い真っ白な壁に大理石の床で案内フロアーには大きなシャンデリアが釣り下がっているのが特徴で、奥の三つの入り口はそれぞれ左から待合室、入場口、医務室なんだ。待合室と医務室の奥にも扉があってもう一つの入場口と繋がっていて互いの剣士がそれぞれの入り口で勝負することになる。
「とりあえず見学してみようか」
 リオンのほうをみると頭を上下に動かした。俺は「それじゃあ」と言って案内フロアーの脇にある右の階段のほうへ進んでいった。ウッドロウさんを見ると「先に言っててくれ」と笑顔を振りまいていた。
「・・・獣はいないのか?」
 階段を歩いていると後ろから唐突に質問が来た。
(あ、そっか。あっちでは熊と戦ってたな〜)
「いないいない。人としか戦わないし、エントリーするにも2つ項目の中から選択しなくちゃいけない。一つは公式戦、これはエントリー者ランダムの1対1で戦う強者を決めるやつだね〜。年に2回しかしないけど。もう一つは二人で登録して勝負する方法。俺たちが稽古場で戦ってたみたいなのかな?あとは裏メニューのサバイバルってのがあるらしいよ」
「そうか」
 見学席に着いたリオンの視線はすでに下の試合に移ってる。今は大きな男の人が二人で試合を行っていた。
「勝敗はどうやってきめるんだ?」
 おっと、やっぱりそこを聞くんだ。
「参りましたって言うだけさ。傷つきたくないならね」
「・・・」
 あー考えてる考えてる。難しい顔してるよ・・・。
「貴族が殺し合いをするのか?」
「本物の剣を使えば」
「・・・何か違うのを使うのか?」
「死にたくなければね。あ、今の振り惜しかったな〜!」」
「・・・」
 実際、貴族の中でもここを使う人は少ない。だって痛いのなんて皆嫌だと思ってるから。もちろん打ち身くらいで済む木刀とかも置いてあるし、子供のけんか用にスポンジで出来たものもある。俺はよくじっちゃんにスポンジでぽかぽか叩かれたなぁ〜。
「すまない。遅くなった。15分位したらスタン君とお手合わせできそうだ」
「え?もしかしてエントリーしにいってたんですか?!す、すみません!!」
 ウッドロウさんにそんなことをさせてしまった・・・。
「構わないよ。この試合、もう40分くらいしているようだからすぐに終わるだろう」
 しばらく俺たちは今やっている試合を見ていた。ウッドロウさんも俺もリオンも剣の振り方とかについて話し合っていた。その後アナウンスが流れてリオンを置いて俺たちは階段を下りた。
 エントリーした場所に行って北門か南門かを聞く。
「じゃあ、俺北門ですね。先行ってきます」
「ああ。楽しみだよ」


 北門に行くとすぐに入場した。防具は腕に着けただけ、俺にとってそれで十分だ。前を見るとウッドロウさんももう来ていて同じように腕にガントレットのようなものを着けていただけだった。
『これより、両者の試合を始めます!』
 アナウンスが流れた。もちろん準備はいつでも構わない。
『始め!』
 ウッドロウさんを真っ直ぐ見る、イクティノスは俺のと違って細身の剣だ。ディムロスよりリーチは長いかもしれない。互いに牽制し合って隙を探す。たまに刃がぶつかる音が俺は心地いいと思っていた。その音が鳴るからこそ試合は面白くなっていく気がする。
 一度剣がぶつかりあいウッドロウさんが後ろへ引いたとき、一瞬バランスが崩れたのを見逃さなかった。
(一歩進んで、突く!)
 気づいたウッドロウさんがもう一歩後ろに下がろうとしたが少し遅かった。
「参った。すごいな、スタン君は」
 左手を上げて剣をおろしたウッドロウさんに、俺は笑顔で答えた。
「いやいや〜運ですよ〜。隙を見つけるの大変でした」
 俺も剣を降ろして近づく、握手して出ようとするとウッドロウさんが俺の耳元で呟いた。
「スタン君は少し待ってるんだ」
「へ?」
 そう言い残してウッドロウさんは去っていく、俺は言われたとおりにその場に待っていると、代わりにリオンが登場した。
「え?!なんで!?」
「こっちの台詞だ」
 リオンはまったく防具をつけていない状態で、不機嫌そうな顔をこっちに向けた。シャルティエは持っているけど・・・。
『急遽、エミリオと名乗る剣士がスタン氏に挑戦するようです!!』
「「ハイ?!」」
 二人してアナウンスのほうを振り返る。リオンもこのことについて知らなかったようで、上にいるウッドロウさんをみるとウィンクされた。
「どうやらあいつのせいらしいな」
「ウッドロウさん・・・」
『これより、両者の試合を始めます!』
 アナウンスは少し興奮気味で叫んでいる。何も知らないからって進行はやるんですね・・・。
『始め!』
 そんなことを考えている内にも試合は始まって、気づくとリオンがこっちに迫ってきている。俺はなんとか剣で防ぐと気持ちを切り替えるよう努力した。
「生死を賭けていると誰も待ってはくれない」
 リオンはそう言って後ろへ下がる。剣を一振りするとまた構えた。俺も構えの姿勢に戻してリオンを見つめる。リオンは身を屈めて攻めてきた。
(これは・・・)
 あのときの構えだ。消えたように見せかけて後ろへ回るやつ!
 同じことは繰り返さないように俺も前に攻めに行く。さすがに気づいたのかすばやく剣を上に振り首もとを狙ってきた。俺はそれを交わすと俺たちは動かなかった。
(こうしてみるとリオンはホントに何処かの王子だ)
 余計なことは考えないようにしているつもりだが、リオンを見ていると本当にそう思う。素直に男の俺でもかっこいいと思う。それに綺麗な構えだ。
 しばらくじりじりとしか動かないままだったが、互いに痺れを切らしたのか同時に相手に攻めてきた。リオンは突きの構えで俺はぎりぎりで跳んで斬りかかった。リオンは得意のバックに回り、俺の背中に刃を当てた。
「参りました・・・」
 また負けた。一度目はアレを交わしたけど、やっぱりあの構えには勝てないのかもしれない。大技なんて仕掛ければさっきみたいに背中をとられてしまうし、前に出ても防ぐことしか出来ない。
「リオン、強いな〜。勝てる日なんてあるのかぁ〜・・・」
「ふっ、さぁな」
 明らかに余裕の顔をされた。悔しいけど、これがリオンと俺の差なんだ。
 上を見上げるとなぜだか歓声が起こっていた。大勢の人が居るわけじゃないけど、皆がいろいろと何かを叫んでいる。
 俺たちが案内フロアーに戻ると人が集まってきていた。
(なんだろ・・・)
「お前らすごい試合だったな!」
「色々学ばせてもらったよ!」
「エミリオは何処のでなんだ!?師匠とかいるのか?!」
「スタン氏にも強敵が現れたようだ」
 次々と言葉が飛び交っていて、ふと横をみるとかなり不機嫌な顔をしているリオンが見えた。
「あの〜俺らちょっと〜」
 焦っている俺に後ろからウッドロウさんが寄ってきてくれた。
「すまないが今日のところは勘弁してやってもらえないだろうか」
 それを聞いた目の前の人たちはぎょっとした顔をした。さすがウッドロウ公爵
、肩書きが違うな〜。皆はすぐに離れていってかなり助かった。
「ありがとうございます」
「いやいや、私が仕掛けたものだしね」
 そういえばそうだった。
「リオンの名前変わってましたね?」
「仕方ないだろう?リオン・マグナスなんて登録したら知ってる者が気づくじゃないか。それに君達の勝負をこの目で見たかったのだ」
 楽しそうに話すウッドロウさんを横目にリオンの不機嫌はまだ治らない。きっとしばらくああなのかも。
「リオン、えーっと・・・」
「気にするな」
 気にするなって言われてもなぁ〜。何で不機嫌になっているのかわからないけど、(全てなのかも)そういう顔をされると気になるじゃないか。
 その後少し騒ぎになったのもあってすぐに屋敷に帰ってきた。リオンが噂になって大変なことになったらどうしようと思ったが、あの闘技場に居る人が少なかったのもあってそこだけの話題の人で収まったようだ。しばらくして何通か何者なのかという手紙がこっちにきたけど、「旅の剣士」の一言を送り返した。

 夕食が終わって暗くなってから俺が無理やりあの丘にリオンを誘ってみた。不機嫌な顔をしているが黙々と着いてきてくれている
「まさかあんなことになるなんて思わなかったよ〜」
「今回はお前のせいじゃない」
「そうなんだけどさ」
 明るい時とは違う、灯りに煌く町並みを見下ろして闘技場でのできごとを思い出していた。空には星が瞬いていて丘はライトアップされているみたいに明るいから二人の姿は良く見えた。
「リオン、試合嫌だった?」
「試合は嫌じゃなかった」
 その返答に俺はほっとした。俺が一番気になってたのは実は試合のことについてだったりする。今の俺の目標はリオンのあの技を見抜くことだし、勝つことでもある。
「良かった〜。俺ちょっと楽しかったからさ」
「・・・」
 さっきから笑顔で応えても何の反応もない。ふと、心地よい風が吹き抜けて、リオンの髪が揺れる。
(試合のときも思ったけど、絶対どこかの王子様だ)
「リオンって実はどこかの王子だったりしてね」
「またか」
「だって試合のときも思ったけど、仕草とかすごく綺麗だし、美形だし、強いし」
 ため息をつかれた。
「そうあって欲しいのか?」
「そうじゃないけどさ〜。そうだったら一緒に居られないじゃないか」
 その言葉にリオンは俯く。
「僕は剣の相手として活かされなくなったら捨てられる身だ」
「リオン、勘違いしてる。俺はそんなことしない。リオンとは友達で居て欲しいんだ。今までどんな人生を送ってきたのか俺は知らないから俺の言葉が信じられないかもしれない。でも、俺、本当に友達で居て欲しくて、それにリオンに憧れているんだ!この前のこともあの闘技場で見たときから憧れてたリオンが来てくれて舞い上がってた。リオンの部屋に居たのも自分の部屋にいいたらいつ戻ってくるかわからなくてつい勝手に入って待ってたんだ。俺のしたことはすごく失礼なことだったのは分かってる。ごめんなさい。だけど、嫌わないで欲しい。もう勝手に部屋に入ったりしないし、嫌なときは言ってくれたらいいからさ!」
 リオンは変わらず街のほうを見つめたままで振り返ってはくれない。
(簡単に上手くいくなんて思ってないけど、無視はやっぱりつらいなぁ・・・)
 しばらくそのまま黙っていたリオンが少し動いた。
「リオン・・・」
「あいつが言ったとおりだな」
「え?」
(あいつって・・・えーっと・・・)
 俺が戸惑っているとリオンはこっちを向いて苦笑した。リオンが笑うところ初めて見た気がする。
「ウッドロウ公爵様があの試合前言っていたんだ。スタン君は今時珍しい純粋青年だから君の考えていることよりとっても単純だと。身分を気にしているのは君だけじゃないのかな、とな」
 ウッドロウさん、俺のことそんな風に見てたんですか・・・単純ってー他に言い方あったでしょう!
「そうかもしれない。僕のほうが色々考えすぎていた気がする。第一お前が小難しいことさえ考えるとは思わないしな」
「皆して俺を馬鹿にしてるなぁー!」
「そうじゃないさ」
 そう言ってリオンはまた笑った。絶対嘘だ。でも、仲直りできたと思うからそれでいいけどさ。
「じゃあ友達になってくれるんだよな?」
「考えとく」
「なんだよそれ〜」
 でも不思議とその言葉に満足していた。きっとリオンの中ではいい意味で言ったと思うし、さっきよりも雰囲気が和らいでいた気がするから。
 その後、俺たちは明日の予定とか話してた。いつもよりたくさん話しあった気がする。こういう風に話し合う友達が欲しかった俺にとって本当に今は幸せなんだ。だからリオンがずっと友達で居てくれたらいいな。
 でも一方で不安を覚える。前みたいにまた友達を失ってしまうんじゃないかって・・・。








コメント
いつになったらリオスタになるの!?前置きなげぇーよっ!!(すいません