41、限界
※『ソーディアン』関連のお話です。詳しくは、お題『ソーディアン』でお確かめください。
スタン達はベルセリウムを探すために、ゴミが積もりに積もった街ジャンクランドに来ていた。
町の人の態度は冷たく、よそ者である彼らに対しては話しも聞こうとしない。
フィリアなど街に近づくにつれて衰退していき、結果人格変異が起ころうとしていた。
「フィリア・・・大丈夫かな・・・」
『あの女にはここはきつかったな。僕でもこんな場所はいたくない』
現在トラッシュマウンテンの中なのだが、スタンでもわかるフィリアの異変に皆心配していた。
「フィリア、無理しなくてもいいのだぞ?」
「大丈夫・・・ですから・・・」
フィリアはディムロスの気遣いが分かっているものの、こんなところではへたれたくないという気持ちが
強いようだ。
最奥についた結果は、小さなベルセリウムがあっただけで満足の行く結果ではなかった。
「これじゃ、足りない・・・」
スタンはがっかりして肩を落としたが、ここでとどまっているわけにも行かなかった。
「一旦町に戻って、別の方法を探してみよう」
ウッドロウの一言で皆は町の宿に戻ることにした。
机の上にあるベルセリウムを取り囲むように座ったスタン達は、別の方法を探していた。
とはいえ、そんな方法が簡単に見つかるはずもなく、ただ黙々とした時間だけが過ぎていった。
「固まって案が出ないのならば、今日は解散しよう。皆も疲れているだろうからな」
「そうですね」
ディムロスの提案は皆が思っていたことなので、解散することになった。
「はぁ・・・。何か、ないのかな・・・」
『街のやつらなら何か知っているかもしれないが、あんな調子だからな』
リオンも八方塞といった様子で、元気付ける言葉も見つからない。
「街の人たちか・・・、よし!俺、聞きに回ってみるよ」
『おい、無駄なことは・・・』
「無駄かどうかやってみないとわからないさ!」
スタンはそういうとリオンを連れて街へと出て行った。
その頃のフィリアはというと、ぐったりと寝込んでいるのかと思えば、何やら怪しい実験を始めている。
「こんな街・・・こんな街・・・うふふふふ」
「すみませーん、あのベルセリウムのことなんですけど〜!」
「・・・」
スタンが声をかけても無視するばかり。
「あ、ねぇねぇ〜ベルセリウムってしらない?」
「知らない!あっちいけ!」
「・・・」
子供にも逃げられるばかりで、スタンもさすがにショックを隠せなかった。
「リオン、この街の人たちに聞くのは無駄なのかな・・・」
『・・・』
呆然と立ち尽くしているスタン。そこに一人の男性が近づいてきた。
「なぁ、おにぃさん。ベルセリウムのこと、知りたいんだって?」
「そうです!何か知ってるんですか!」
「うーん、ここじゃさ、周りがうるさいからこっちきてよ」
「はい!ありがとうございます!」
『・・・』
やっと声をかけてくれる人が現れたことにスタンは嬉しさを隠せなかった。
(やっぱいいひともいるんだな!)
のこのこと付いてくるスタンに男は笑顔を見せていたが、その笑みがたまに崩れた笑みになっていること
にリオンは不審を抱かざるおえなかった。
《まぁ、変態なら殺すまでだ》
「はーい、ここが俺の家〜」
「おじゃましまーす!」
明らかに倉庫としか思えない。スタンは何の疑いもなくそこに入っていくと閑散としすぎていることに少
し疑問を持った。
「なにもない部屋ですね〜」
「まぁーな。ほら、そこのソファーに座りなって」
ソファーといっても簡易ベッドのようなものだったが、スタンは勧められるままに座る。
「じゃあ始めようか」
「はい!・・・って何を?ベルセリウムのこと教えてくれるんじゃ・・・」
近づいてきた男はスタンの言葉をさえぎって、軽くスタンを押し倒した。
「ただでは教えない。ちょっと遊び相手になってくれればいいのさ」
「遊び相手?」
「そう、だからおとなしくしてろよ?」
《こいつ・・・!!》
『スタン、逃げろ!』
「だって、知ってるってっ・・・く、くすぐったいです〜」
耳を甘く噛まれて、ぺろりと舐められた。
『お前は無知すぎる!何されるのか分かっているのか!逃げろ!スタン!』
「あっ、ふにゃっ・・・」
服を捲られて、腰の辺りを触れるか触れないかの強さでゆっくりと愛撫される。
「もしかして敏感君?」
男はスタンの反応に気を良くしたのか、手はそのまま動かしつつ、反対の腰をキスし始めた。
「あ、駄目ですっ・・・あはっ、く、くすぐったい・・・あっ・・・」
『僕の言うことが聞けないのか!』
「だ、だって・・・ち、力が入らない・・・」
ブチッ。
何かが切れるような音がした後、リオンは剣の姿から人型へと変化した。
「な、なんだ!?」
いきなり現れた少年に驚いた男は呆然と見つめていたが、それもつかの間、
「貴様ら!!いい加減にしろー!!!」
という叫び声と痛みと共に男の意識は真っ白になった。
「リ、リオン」
「スタン!あんな男に感じるなっ!あのままされていたらどうなってたと思うんだ!」
限界突破のリオンは顔を真っ赤にしながら怒っている。そんな姿を初めて(人型すらあまりならないが)
みたので、スタンも怯えている。
「ごめんなさいっ!俺、何か知ってるんじゃないかと思って・・・」
「あんな男から聞き出すな!スタンに触れていいのはこの僕だけだ!いいか!」
「わかった!」
勢いに押されて返事をしたスタン。リオンはそれをみて落ち着いたのか、冷静さを取り戻してきた。
「とりあえず、帰るぞ」
「うん、リオン、その姿で?」
何事もなかったかのように宿に戻ると、いきなりルーティーが走ってきた。
「大変よ!」
「いや〜こっちも大変・・・」
「何言ってるのよ!フィリアがいないのよ!さっきから皆で探してるんだけど」
『何!』
一体何が起こったのかすべて把握しきれないうちに、また誰かが駆け寄ってきた。
『ウッドロウまで』
「トラッシュマウンテンにきたまえ!フィリアが!」
「わかった!」
トラッシュマウンテンに着いたスタン達は、その異様な光景に目を疑った。
「悪魔?」
「死神?」
「フィリアだ!」
ドス黒いオーラに一瞬誰だかわからなかったルーティーとスタンを察してウッドロウは叫んだ。フィリア
はなにやらドデカイ爆弾のようなものを抱えている。
「こんな街、消えてしまえばいいのよ・・・。ベルセリウムすらないのに・・・ブツブツ」
「フィリア!やめるのだ!我らは世界を救うと決めたではないか!」
まるで三文芝居を見ているかのような光景だが、今はそうもいってられない。街の人々はフィリアの爆弾
をみて震えている。
「わ、わかりました。ベルセリウム出しますから〜」
「え?なんだって?」
一人の若者がそういうと家に入ってまた出てきた。
「これでいいでしょうか・・・?た、たすけてください!」
そこには大きなベルセリウムの塊がある。スタンは素直に感謝の気持ちを伝えたかったが、怯えている若
者をみて何だか複雑な気分だ。
「すいません。なんとかしますから!その、嫌わないでください!」
「は、はいぃ!」
完全に怯えきっている若者に言葉は通じないようだ。
「フィリア、そんなことはやめてこの街をでよう!ほら、ベルセリウムも見つかったことだし」
みつけたというよりは、脅して奪ったといった感じだ。スタンはフィリアを真正面から見つめて満面の笑
みを見せた。
「ほら、戻ろう」
「あっ・・・す、スタンさん・・・」
正気に戻ったのか、ドス黒いオーラが消えて、真っ白ないつものフィリアに戻った。
「さ、戻ろう、フィリア」
「はい!こんなところさっさと出ましょう!」
こうしてスタン達はベルセリウムを獲得すると、飛行竜のあるダリルシェイドに戻っていった。
ジャンクランドの人々はこの日を教訓に少しづつ掃除をしはじめたとかなんとか。
「限界を超えるとみんな怖いんだ・・・」
「そうね・・・(フィリアのことだけだと思っている)」
コメント
ベルセリウム奪っちゃったよ・・・。