39、困惑








 ※『ソーディアン』関連のお話です。詳しくは、お題『ソーディアン』でお確かめください。





 ミクトランの圧倒的な力の差に対抗するべく、スタン達はかつてソーディアンを研究していた施設に来ていた。溶岩が湧き出す道を進んでいった先は、見たこともない機械の部屋だった。
「ここがソーディアン研究所ね」
『さて、フィリアあの中央の機械に行きなさい」
「はい」
 フィリアは言われたとおり機械の前に立つと、クレメンテに操作方法を聞きながらキーボードを叩いていく。
『どうやら動けるようじゃ、皆そのポッドへ入ってくれ』
「わかった!」
『スタン、皆もよく聞け。相手はお前らと互角、いやそれ以上の力を持っているだろう。相手がどんなやつであれ、全力で戦え。さもなくば命を落とす』
 リオンは静かにそういった。スタン達は視線を送りながら頷いた。
「大丈夫だ!皆生きて帰ってくる!」
「当たり前だ。我が保障する」
「そうね。生きて戻ってくるのよ」
『よし、準備おーけーじゃ』
 クレメンテがそういうとフィリアは走ってポッドに向かった。それと同時にスタン達は意識を失った。




「・・・真っ暗だ」
『何ボーっとしている。行くぞ』
 次にスタンが見た視界は暗闇だった。だけど、不思議と怖くはなかった。
「リオン、絶対勝とうな!」
『当たり前だ』
 スタンが進んでいくと、淡い光が見えてくる。薄暗い光の中に、人影が見える。
「やっぱり・・・」
 その人物の前に立つと、スタンは苦笑した。
「お前だと思ったよ。リオン」
 目の前にいるのは細身で黒い髪の少年だった。
「ならば、話は早いな。僕と勝負だ、スタン!」
「もっと違う形で会いたかったけどな。リオン、勝負だ!」



 それから数日後、無事に生きて戻ったメンバーはダリルシェイドに戻ってきていた。ダリルシェイドの宿屋はもはやスタン達の拠点と化していた。女性人の要望や、王様の計らいによって今日は1泊することになり、皆顔を合わすとソーディアンの容姿について語り合っているのが目立った。
 スタンもひとしきり皆とソーディアンのことについて語り終えると、部屋へと戻っていった。

「しっかし、リオンってあんな小さいんだな。もっと違う想像してた」
 リオンをベッド脇の机に置くとスタンはベッドに腰をかけた。
『全く、どんな人物を想像していたんだ。・・・体が小さくともお前よりは戦えたぞ』
「強かったな。どんな鍛え方していたんだよ」
『お前にはできないさ』
 ふっ、と笑うとスタンはほっぺを膨らました。
「そんなことない!俺だってできるはずだ!また人間になったらなー、勝負できるのに」
『僕だってできるものならしている』
「あのリトラーさんみたいな感じで・・・このレンズ押したら現れたりとか」
『おい、そんな玩具みたいな考えは・・・』
 リオンはそう言ったが、スタンは物は試しと紫色のレンズをポチっとなと指で押してみた。
「やっぱ無理か・・・」
 と、スタンが肩を落としたときだった。足元を見ていたスタンの目の前にちらちらと人の足のような物が構築されていく。
「り、リオン・・・」
『だから言っただろうが』
「いや、あ・・・足・・・」
「そんな玩具みたいな考えはありえないと。なんだ、足がどうした?」
 リオンはスタンの異変に気づき、困った表情を見せた。
「リオン、そのお前が目の前に居るんだよ!足元をみろ!足!」
「大丈夫か、スタン。何言って・・・」
 下を見た瞬間、リオンは固まった。脳の機能が一時混乱したらしい。
「足だな」
「足だよ」
 目を合わせてそれだけ言った二人は傍から見れば変な合言葉に聞こえたかもしれない。リオンは次に剣を見た。まさしく自分というべき存在が、幽体離脱のように外から見えた。
「おい、しゃべるのか!僕、しゃべれるのか!」
『・・・』
「リオンがそこに居るから無駄だと思うよ」
 スタンは至極冷静につっこんだ。リオンがいつも以上に取り乱しているせいかもしれない。
「まさか、こんなやつの想像が現実になるなど・・・」
「まぁ、良かったじゃないか。今度皆にも教えよう〜!!」
 スタンは良かった良かったと笑顔を見せてリオンを見ていた。リオンのほうはそんなスタンをみて、冷静になったのか、そう慌てることはないかと考えを改めた。
「スタン、触れるか試してもいいか?」
「うん、いいよ!」
 一応許可を得たので、恐る恐るスタンの肩に触れてみた。
 パシパシッ
「あ、実態あるんだ。すっごいな!」
「そうみたいだな」
 ここでリオンはふと気がついた。
(ということは、これでティンバーを倒すことができる!それにスタンにも触れることができるわけだ)
「ふっ」
「なんだよ」
「いや、なんでもない。さ、今夜はもう寝ろ。明日早いだろう」
「え?あ、うん。もう一回押せば戻るのか?」
 と、また押すと今度は頭のほうからリオンが消えていく。スタンはそれをみて安心しながらベッドにもぐりこんだ。
「これならいざというとき15人パーティになれるな!」
『それはそれで動きにくいだろうな・・・』
 スタンの発想に呆れながらも、リオンは別のことを考えていた。
「それじゃあ、おやすみ〜」
『ああ』




(これでスタンにいろんなことができる!・・・まて、嫌われた場合もう一生ここから出してはもらえないだろう。慎重に行動に移すべきだな。はっ!!・・・僕は感じることができるのだろうか・・・)




 リオンは新たな疑問を見出してしまうのであった。








コメント
最後の疑問、知るのに時間がかかりそうだ。