19、守りたい









 リオンの家に一ヶ月だけ居候となった日から三日目。いつまでも遊んでいるわけにはいかない二人は、国王から召集命令が下った。リオンはいつもどおりシャルティエを装備し、スタンはディムロスの変わりにフランヴェルジュを借りることになった。
「こんな高そうな剣、いいのか?」
「炎属性で、それくらいしか今のところ強いのがない」
「わかった」
 スタンはなんとなく納得すると、リオンと共にセインガルドへと向かった。

「スタン、一時的とはいえ我が国のために働いてくれること、感謝するぞ」
「いえ、俺のような者を働かせてもらえるなんてとても嬉しいです」
 謁見の間に呼ばれたリオンとスタンは15名程の王国兵士の前列に並んでいた。
「ふむ、さっそくだが最近ストレイライズの森に不審な輩が棲み付き始めておるそうだ。神殿に行く人々を襲い、金品または人攫いのようなこともしておる。確認できた人数は10名ほどだが、それ以上におるやもしれん。諸君らにはその討伐をしてもらいたい」
「はっ」
「もちろんです」
「指揮はそなた達に命ずる。うしろの兵士を共に連れだってくれ。相手は戦闘に手馴れたものもいるそうだ。十分気をつけてくれ」
「ありがたきお言葉」
「健闘を祈る」




 討伐のためダリルシェイドを出て、一度ストレイライズの森へ向かうことになった一行。
「スタンさんは、かの神の眼を奪還した英雄なんだって」
「ええ!?あの人が?!」
「あんな優しくて可愛らしい感じの人が・・・」
 英雄たちと共に仕事ができることが嬉しいのか、兵士達は少し浮き足立っていた。スタンはすぐに兵士達と仲良くなり、セインガルド兵の一日や、客員剣士であるリオンの武勇伝を聞かせてもらったりしていた。一方リオンは、この道中何があるかわからないのに少し緩んでいる兵士達を見て一人心労気味だった。
(この道中は行きなれているとはいえ、なんだこののほほんモードは。スタンもスタンで・・・)
「どうしたんだよ、リオン」
 睨まれたような視線に気づいたスタンはリオンのほうへ駆け寄った。
「・・・スタン、言っておくがこれはこの前の旅とは違い、仲間の戦闘力がわからない。且つ、この人数だ。油断して死にたくなければ少しは気を引き締めろ!」
「あ、ごめん・・・」
 しゅん・・・と一瞬落ち込んだスタン。
「リオンはさすがだな。俺もうちょっとリーダーらしくならないとな」
「わかってるならいい。お前は無理に指揮を執ろうとするな」
「むぅ」



 一行がストレイライズの森についたのは翌朝だった。結局のろのろと出発したため、アルメイダで一泊して今に至る。
「よし、全員配置につけ。声がしたら一斉に動け」
「「「はっ」」」
 リオンが兵士に作戦を言い渡した後、皆は配置についていった。
(なんでリオンが一人で先に行くんだよ〜。皆で行くほうが安心なのに)
 作戦はこうだ。リオンが一人で神殿に行くフリをし、襲い掛かってきたところを合図と共にキャッチ。という実にシンプルな作戦だ。
「まぁ、リオンの強さなら問題ないけどさ」
 スタンはリオンを信頼しているけれど、あまり危険なことはして欲しくなかった。作戦が始まり、スタンはひっそりと身を潜める。

(・・・遅い。30分かかってる)
 一向に合図のない様子にスタンも少し心配になってきた。
(やっぱ、待ってるなんてできない!)
 スタンは我慢できずに一人リオンの向かったほうへと歩いていった。

 その頃リオンはというと全く襲ってくる気配のない輩に苛々していた。
(やはりアルメイダであんな大勢が一泊したら気づくか)
 しーんと静まり返った森に一人神殿に向かって進んでいく。
(このまま神殿まで着いてしまっては意味がないんだが・・・)
 そう考えていると行商人の男が目の前から降りてきた。
(ここで来られては、一般市民に被害が・・・)
 早々にここから立ち去れと声を掛けようとリオンが近づいていくと男は急に振り返った。
(なんだ?・・・むぐっ)
 目の前に来たかと思うといきなり口を押さえられた。リオンはいきなりのこと動転したが、すぐに気がついた。
(そうか、こいつも・・・)
 男は黙ったままで森の道はずれへとリオンを連れて行く。もしかしたら一味の隠れ家に連れて行くのではないかと考えたリオンはそのまま黙って連れ去られていった。


「リオン・・・どこまでいったんだ」
 神殿に向かう道を進んでいったはずのリオンが見つからない。
「もしかして・・・ん?」
 引き返そうとしたおり、スタンは声がするのを聞いた。
『スタンさん!ここです!ここです!』
 どうやらシャルティエらしい。ソーディアンの声は今はリオンとスタンしか聞こえない。
『聞こえますか?どうやら私のいるところがアジトみたいです。坊ちゃんは今私より奥の部屋に連れて行かれたかと。ですから皆さんを・・・』
「シャルティエ!」
『って、スタンさん!早っ』
 シャルティエがすべてを言う前に来てしまったスタンは、シャルティエを手に取り、洞窟のような場所に一人入っていく。
『スタンさん・・・あのぉ・・・』
「何者だ!」
「あいつの仲間か!」
 当然盗賊たちにも見つかり、スタンは一人戦うことになる。
「リオンはどこだ!!」
「やっぱり、あいつの仲間か、ヤれ!」
 その言葉と共にそこにいた数人が襲い掛かってきた。
『一人で突っ走るなんて危険ですから・・・』
「うらぁあああ!!!」
 シャルティエの言葉など耳に入らないくらい大きな声がこだまし、スタンは突進していく。
「虎我破斬!!鳳凰天駆!!」
 ディムロス装備中でないとしてもこの威力はなんなのか。スタンはあっと言う間に相手を倒していく。この騒ぎに気づいたのか盗賊の仲間が次々と現れた。
「あんなやつ、はやくやれ!」
 総勢10名くらいが一斉に襲い掛かる。スタンは怯む様子もなく、攻撃に備えた。
「まとめて吹き飛ばしてやる!!獅子戦吼ぉおおお!!」
「っぐわぁああ!!」
「ぐはっ!!」
 こうして敵は見るも無残に散っていった。
『・・・』


「リオン、リオン、大丈夫か?」
「スタン・・・」
 リオンの縄をすぐに解くとスタンはいきなり殴られた。
「いたっ!何するんだよ!」
「バカか、お前一人できただろう!シャルがちゃんと作戦をだな・・・」
「呼んでくる間にリオンが死んだらどうするんだよ!俺はそんなのやだ!」
「スタン・・・それでお前が死んだら僕は一生恨んでたぞ」
「でも・・・」
「お前はつくづく指揮なんて向いてない。困ったやつだ」
 リオンはため息をついたあと、待機していた兵士達を呼び集めた。

「しかし、これ全部あいつが倒したのか」
『ええ、しかもディムロスさんが居ないのに鳳凰天駆使ってましたし』
「・・・」
 兵士達が捕まえたのは全員で26名。リオンでも一気にかかられたら骨が折れるくらいの人数だ。
『ディムロスさんと気が合うのがわかる気がします。あの人とどこか似てます』
「・・・」
『兵士がなくても大丈夫でしたし、きっともっと強くなりますよ』
 シャルティエの言葉はリオンはだまったままだった。

 その帰り道、リオンは何かをずっと考えていた。セインガルドに着き、国王に報告しに行った後、家に戻ったリオンは部屋からレイピアを持ち出すとまたどこかへ行ってしまった。
「リオン?」
 スタンは不審に思いながらも、後をつけるようなことはしなかった。





(あいつに守られる立場だけはなりたくない!僕があいつを守るんだ!)










コメント
フランヴェルジュなんか持ってる家なんてそうそうないだろー。ってかTODの世界にあったかなー。