10、夢








 これはきっと夢だ。

 僕は夢を見ているんだ。
 
 夢なんだ・・・。





 うっすらと目を覚ますと、僕の視界にいないはずの金色の髪がさらりと零れ落ちた。
(夢か・・・)
 僕はそう結論付けるとそっとその髪に触れた。見た目より柔らかい髪は僕の指をするっと流れていって、もっと触れたくなる。もう一度触れようとすると、もぞもぞとあいつが寝返りをうった。何の夢を見ているのか知らないが、きっと幸せな夢なんだろう。
「ん・・・」
 期待通り髪を撫でてやると、可愛い反応が返ってくる。顔を近づけてくるところをキスしてみる。もっと触れたくなって、頬にも瞼にもキスしてみる。
(どうしてこんなにも愛しいのだろう)
 目の前のやつは男であって、細身だがしっかりと筋肉はついている体で、悔しいが僕より身長はある。
 だけど、お前が欲しくてたまらない。

 お前だけが僕を狂わせる。



 身長差を利用して首元にキスをした。すると、向こうから腕が回ってきた。
「リオ・・・ン〜・・・」
 相変わらず瞼は閉じられていて、寝言かと安心する。
「好きだ・・・」
 

 わかってる。
 
 これは夢。
 
 僕の夢。
 
 だからもうしばらくこのままこの幸せに浸ってもいいだろう?







「起きろ〜」
「・・・うるさい・・・僕は今いいところなのに・・・」
 夢の邪魔をされて渋々ながらも起きてみると、夢と同じ位置にスタンがいた。
「お前なんでっ!」
 驚きのあまり体を引くと、照れた顔でなにやら言いたそうだ。
「なんでって用意してくれた部屋寒くてさ、リオンに言うのも悪いって思ったけど我慢できなくて言いに行こうとしたら、この部屋あったかくて起こすのも悪かったからもぐりこんでみた。怒った?広いベッドだからいいかな〜って・・・」
「お前・・・」
「わぁー怒ったなら謝るよ〜!!ゴメン!」
「怒ってない。そうじゃなくて・・・よく自分のことほれて・・・いや、なんでもない。そうだな、二人で寝たほうが暖かくていいな」
「じゃぁ、部屋は?」
「僕の部屋でいいだろう?」
「そうだな!」
 何も考えないでニコニコと笑うスタンを見ると少し罪悪感が生まれるが、しばらくの間は幸せに浸らしてもらおう。 











「今日、顔中ぼこぼこに殴られて、最後に顎から殴り飛ばされて、リオンに助けを求める夢をみたよ〜。怖い夢だったな〜」
「・・・・」










コメント
スタンは襲われにきたんじゃないんです(わかってる