4、飛行竜
「懐かしいな〜、ここ〜」
「・・・!」
「あんたにはそうでしょうね」
スタンの間抜けな声が飛行竜の中で響いた。リオンはその言葉に目を見開いたが、ルーティの一言でスタンに話す機会を失った。
『何故、我と出会ったのがスタンだったのか・・・』
「なんだよ、ディムロス!俺じゃ不満なのか?!」
『冗談だ(とも言い切れないが)』
ディムロス達の話を聞いているうちにリオンもスタンの一言目の台詞の謎が解けた。
(そういえば、ディムロスは元々これで運ばれる予定だったな・・・)
あまりにもソーディアンとマスターの面々が揃いすぎていて、元々持っていたメンバーのように感じられる。しかし、スタンとディムロスは数週間前に出会ったばかりなのだ。
(なのに、あの仲のよさは・・・)
『坊ちゃん・・・坊ちゃん・・・?』
「なんだ、シャル」
『あ、なんでもないです〜』
不審そうな声をするシャルに少しイラついた。
「言いたいことははっきり言え」
『は、はい〜!えーっと、休まれなくて大丈夫ですか?飛行竜もう飛んでますよ』
「!?」
リオンはすたすたと早歩きで操縦ルームから出て行こうとすると、スタンに見つかってしまった。
「リオン?どこいくんだ?」
「少し疲れたから部屋に行くだけだ」
「そっか」
スタンもそれ以上聞くことなく、リオンは内心ホッとしながら部屋へ向かっていった。
「シャル、このことはあいつらに言うなよ」
『わかってますって』
「リオン、大丈夫かな・・・」
リオンが部屋に戻ってから2時間が経過した頃だった。
「いきなり何よ、心配なら直接見に行けばいいじゃない。当人は嫌がるかもしれないけど」
「だから行きにくいんじゃないかぁ」
目的地まであと1時間くらいで着くので大丈夫だと思うが、スタンは珍しく「疲れた」と言ったリオンを気にしていた。
「はぁ・・・」
「スタン!」
「!?」
ルーティが少し大きな声でスタンの名を呼んだ。
『ルーティが妬いて怒り出す前に退散したほうがいいわよ・・・くすくす』
「アトワイト!」
「ほぇ?」
『そういうことだな。スタン、見にいってすっきりしてこい』
「ええ?・・・そうだな、見に行ってくる」
話の半分くらいはわかってないスタンだが、ディムロスに背中を押されたので少しだけ部屋を覗いてみようと操縦ルームを後にした。残されたルーティは「はぁ・・・」とため息をつくと、
「別に妬いてるわけじゃないわよ。まどろっこしいのが嫌いなの」
と、誰ともなく呟いていた。
「リオン?入るよ?」
扉を叩いたが返事がなかったので、スタンは扉を開けた。
ガランとした部屋のベッドにリオンは寝ていた。
「シャルティエ、リオン大丈夫?」
できるだけ起こさないように小さな声で喋ったが、反応が返ってきた。
『はい、寝ているだけですよ』
「起きている、気配で目覚めた」
うっすらと瞼が開いたと思うと、顔色はあまり良い感じではなかった。
「ごめん。顔色が悪い・・・熱とかないか?」
「ない。それよりもう着いたのか?」
「後1時間くらい」
「一時間も・・・」
その言葉を聞いてさらに気持ち悪さがぶり返して来た。しかし、スタンに弱いところなど見せたくない一心で平気さを装っている。
「何か俺にできることないか?水とか持ってくるし」
「・・・・」
「何でもいいから」
リオンの言葉を待っていたスタンは、思いがけない言葉を口に出された。
「着くまで手を握っててくれ」
「え?それだけでいいのか?」
「ああ」
「わかった」
そういってリオンの言うとおりそっと白い手を握った。思いがけない細さに彼は少年なんだと思い直して少し微笑んだ。
「何がおかしい?」
「なんでもない!」
「・・・」
まぁいいという風に顔を横にするとゆっくりと瞳をとじた。
(こんなのも悪くないかもしれないな)
手から感じられる温もりが心地よかったからなのか、リオンはすぐに寝入ってしまった。
「着いたんだけど、戻ってこなかったわね」
『そろそろ見に行ったほうがいいんじゃない?』
『そうだな』
そういってルーティはディムロスを持ってリオンの部屋に向かった。中に入ったとたん目に映った光景は、あまりにも子供っぽくて懐かしさを感じてしまった。
「あいつら(孤児院の子達)と変わんないわよ」
そう言って、手を握ったまま寝ている二人を思いっきり起こしてやったルーティだった。
コメント
ルーティ+リオン+スタンの関係がお気に入りなんで書いてみましたが、リオスタじゃなくなってる?!ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!
一つ思った、スタンが「シャルティエ」って呼ぶことないな。