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『キミがその手を離すまで』
※一部R指定(性的な意味で)の文章があります。構わない方だけお読みください。
「・・・スタン?」
リオンが屋敷へ戻った時、ふとスタンの声が聞こえたような気がした。しかし出迎えるマリアンを見てもそんな気配はなさそうだ。
(僕もヤキが回ったかな)
「ふぅ・・・」
ここのところ結構忙しかったので疲れているんだろう。後3日もすれば年が明ける。今日で大体の仕事は片付いた。皆も年明けまでの間ゆっくりできるだろう。
リオンにはもう一つ大きなイベントが待っていた。
「七将軍か・・・」
「どうなされました?」
「いや、なんでもない。マリアン」
リオンはコートをマリアンに渡すと部屋に戻っていった。彼女は何も言わずにその服をクローゼットに直した。
(七将軍の一人になるか、このままいるか)
リオンにとってこの話はどちらかというと嬉しい話であった。今年の年期を以ってニコラス・ルウィエンが長老を辞めようと思っているらしい。歳も歳だ。足手まといになってはと自ら辞めることは決めていたらしい。そんな中、グスタフ・ドライデン最高指揮官が新任者にリオンを名指ししたのだ。しかし七将軍は王国騎士とは違って城にいつもいるわけではない。他国や地方に遠征に行くことがしばしばだ。選ばれた者だからこそ少人数での仕事を任される。
リオンは会議の合間にふとした疑問をニコラス・ルウィエンにしたことがある。
「僕よりも適任がいると思いますが、例えばティンバー殿など」
「うーむ、実はな、お主には失礼かもしれないが、一度彼にもお願いしてみたのじゃ。そしたらあっさり断られてしまった」
苦笑するルウィエン。
「理由はな、スタン王子の先生を辞めたく無いそうだ」
「そうですか・・・」
ディムロスらしいと言えばそうなのかもしれない。
リオンはそれを聞いて悩んでしまった。「任せると思うがどうか」と聞かれたとき、正直嬉しかった。念願の王国騎士に近づく、いやそれ以上だ。一個師団を持つことができるし今の任務に飽きているわけではないが、自分の実力を発揮できる仕事ができるのだ。そして、世界を見ることが出来る。しかし、スタンとの距離はきっと離れることになるだろう。他の誰かが傍に居てスタンを守るのだ。
「これも分かっていたことじゃないか・・・」
友達であることにはなんら変わらない。ただ合える回数が減るだけだ。
「スタン・・・」
(あいつはどうしてるだろうか・・・?)
スタンは今、自分の部屋にいた。
「あぁ・・・ふっ・・・あぅ・・・ン・・・」
「気持ちいいんだね」
(どうしてこうなっちゃったんだろう・・・)
ぼーっと頭の中に靄がかかっているようだ。考えたくても、次々やってくる甘美な刺激に思考を絡め取られる。ウッドロウの指が動くたびにスタンは甘い声を洩らした。彼の動きはスタンの弱い部分を全て知り尽くしている。
あの頃はこんなに気持ちがいいものだとは思わなかったのに何故、と疑問に思ったスタンだが、その思考もかき消される。
「ここはもうこんなになってる。いやらしいな、スタン君は」
そう言ってスタンを笑う声も今の彼にとっては低く響く甘い声だ。
「あ、あっ、そこっ・・・ダメ・・・あ、あぁぁぁあああん!!」
ぐったりと身体がウッドロウの方へと傾く。その重みですらウッドロウにとっては愛しい存在だ。肩で息をしている姿をみて密かに笑みを零した。
(かわいいね、スタン君。私の計画通りだよ)
「あ?あぁ、もう、あぁ・・・ん」
背中を愛撫すると敏感な肌はすぐに仰け反った。露になる喉元にキスをして、鎖骨、肩、胸と刺激していった。背中を愛撫していた指が下へ下がる。
「やっ・・・!」
一瞬抵抗を見せたが、それは本当に一瞬だった。
動かす指先に反応する。何も知らない者ならこんな反応を見せるわけが無い。
「・・・欲しいかい?」
「・・・あぁっ・・・はっ・・・ほ・・・欲しいですっ・・・もっと・・・」
「ははは、本当に淫乱な子だ」
この日、スタンは堕ちた。
それから2日が経ち、リオンは城に呼ばれていた。来年を迎えるこの日のパーティーに呼ばれたのだ。この前のように大人数ではなく王が最も信頼する者達が集められている。その中に含まれたリオンは正直複雑であった。
(七将軍の件だろうか、スタンの友人だからか)
一方のスタンは今は王の隣で大人しく座っている。さすがに前みたいに逃げ出していないことを確認してほっとした。反対側にはいつものようにウッドロウが王の隣で立っている。
(一体何者なんだろうか?)
今改めてウッドロウという男を考えてみると謎だらけだ。教育係として連れてこられたのは皆周知のことだが、どこの出身でどうやって教育係に選ばれたのかよくわからない。
(ん?)
ウッドロウが一瞬スタンを見た。その視線の先のスタンを見ると顔を赤くしてその視線に対して俯く。まるで視線を合わせられないかのように。
(・・・この反応・・・)
何処かで見たことがある。いや、よく知っている。リオンがスタンに視線を向けられた時だ。ディムロスもやっていた。
(まさか・・・?スタンは・・・)
リオンの視線に気づいたのか、スタンが王に何かを言って走り寄ってきた。さっきとは違い満面の笑顔を向けたが、顔は少し赤いままだった。
「リオン!久しぶりだね」
「そうだな。しばらくだ」
話したいことや聞きたいことは山ほどあったリオンだが、さっきの反応のせいで一気にどうでもよくなった。それよりもお前のさっきの反応の意味を教えてくれと。
「今日は俺暇だから一緒にいれるよ!」
(・・・あいつと一緒にいたいんじゃないのか?)
「僕もだ」
(でもあいつの傍にいさせたくない)
「じゃあ、俺の部屋に行こう!いっぱい話し聞きたいし!」
(僕も聞きたいことがある)
「あぁ」
(・・・などと、僕はスタンの恋人でもなんでもないのに)
初めて感じた激しい嫉妬がリオンの中に生まれていた。
部屋に着いたリオンは部屋の隅においてある椅子に腰をかけた。スタンは「待っててね」と部屋の外へ出る。すぐに戻ってきてリオンの傍に寄ってきた。
「最近いいことでもあったのか?」
終始笑顔でいるスタンを見て、リオンは意地悪くそう言った。その言葉にスタンは驚いたように見つめ返した。
「なんで、わかったんだ?」
「あれだけにこにこしていればな」
照れたような困った顔をする。リオンに隠す必要が無いということなのだろうか。
「実はディムロス先生が帰ってくるんだー!」
(そんなことじゃない、聞きたいのは!)
心の中がざわつく。リオンは話題をすり返られた気分だった。
「あれから半年も経ったのか・・・」
冷静を装って、自然な会話をするが、視線だけはスタンから離れられない。瞬きを忘れるほど真実が知りたかった。自分は気持ちを伝えることなどする気も無いのに。
スタンをずっと見ていると、前までは無かったものに気がついた。
「お前、イヤリングなどしていたのか?」
「あ、これ?コレはね・・・もらったんだ」
そう言って耳を触りながらにっこりと微笑んだ。
「誰からだ?」
「秘密!」
いつまでも笑顔でいるところをみるとウッドロウだなとリオンは気づいた。よくよく見るとルチルクウォーツのイヤリングだ。リオンはその宝石がどんな効果だったかと思い出そうとしたが今は出てこなかった。
「スタン」
「ん?」
イヤリングを気にしていたスタンは声を掛けられて視線を戻した。そこにはいつになく真剣な眼差しがスタンを見ていることに気づいた。
「ど、どうしたんだ?」
それだけなのに、スタンは何故かウッドロウの時のように心臓が鼓動を速めている。
(まただ・・・おかしい・・・)
「聞きたいことがある」
「な、何?」
(な、なんでそんなにみてくるんだよ!)
向かい合っているのでリオンの顔がはっきりと見える。
「お前は好きな人とかいるのか?」
(どうして今?)
「俺は・・・」
スタンの心の中は複雑な気分だった。好きだと思ったリオン。しかしウッドロウの行為を素直に受け止めてしまった自分。もしかしてウッドロウのことも好きなのではないかと思い始めていたからだ。
「気になる人はいる・・・かな?」
曖昧に言葉を濁したスタンと同時に部屋の扉が音を立てた。
「お菓子だ!取ってくるよ!」
誤魔化すために急いで取りに行く。リオンはスタンを見つめながらさっきの言葉の意味を考えていた。
(気になる人・・・まだ恋人ではないからか?それとも言いにくいからそういったのか?)
お菓子を運んできたスタンはもうすでに違う話題に移っていた。リオンは小さくため息をつくと、その話題に合わせた。
それでもギクシャクした雰囲気は拭えなかった。
「すごい!じゃあ七将軍に選ばれたんだ!」
「まだ、決めて無いが・・・」
「そうなんだ・・・どうして?」
そういいながらクッキーを手に取る。甘いバニラの香りがする。一口かじるととても美味しかった。
「僕は王国騎士になりたかったからな」
「そうだったなー」
目の前でスタンは大きく頷き、七将軍と王国騎士の仕事の違いを改めて思い出してる様子だった。リオンはそんな彼を見ていると思わず自然に手が伸びてしまった。口元のお菓子の残骸に。
「あ、」
スタンはその行為に恥ずかしくなって顔を染めた。
「こんなところにつけるな、王子だろう」
取ったものをどうすればいいか悩んだ挙句、リオンはとりあえず食べた。小さいのであまり味はわからないななどと呟く。
(た、食べちゃったよ・・・)
別にその行為自体恥ずかしいことでもなんでもないのだが、今のスタンにはとても恥ずかしい行為に思えた。口に咥えられたその指が。
「どうした?顔が赤いぞ」
(ウッドロウでも無いのに・・・何かを思い出していたのか?)
指摘されてなんでもないと手を振るスタン。その肘が傍にあった紅茶に見事に当たってしまった。
「うわぁ!」
「何をやってるんだ・・・」
零れた紅茶はスタンの足元に盛大に降りかかっていた。スタンはハンカチで服の裾などを拭いているが全然足りない。リオンは椅子から立ち上がると、扉の向こうにいる誰かにタオルを持ってくるように頼んだ。
「少しは落ち着け」
戻ってきたリオンは自分のハンカチを取り出すと、スタンの靴を脱がせて濡れた足などを拭いて回った。こんなことも召使いがやっているんだろうなと思っているリオンと違って、スタンは心臓の鼓動が耳元で響いているくらい大きく鳴っている。
(や、やっぱり俺はリオンが好きなの・・・?)
「足はこれでいいか。その上の服は脱げ、それからベッドから降りるな」
「う、うん」
(見上げないでよ・・・!)
言われたとおり上の服を脱ぐ。それを手に取ったりオンは音の鳴った扉のほうへそれを持っていった。召使いとの最小限の会話が交わされると、リオンはすぐに戻ってきた。
「お前は何もしなくていい」
余計に零されてはかなわないという言葉は心の中に飲み込んで、絨毯を綺麗にふき取っていく。
「い、いいよ!そんなの、また新しく変えてもらうから・・・」
「そうだな・・・」
適当にタオルを敷いて置くとスタンのほうを見上げて苦笑した。
「王族らしいな」
「な、何だよそれ・・・」
「なんでもない、それより新しいものを新調しないとな」
「別に・・・俺もう出る必要ないし、このままリオンといるほうがいい」
(お前は本当に僕のことがわかって無いんだな・・・)
やはり誘うことをどこかで知っているんだなと思いつつ、小さくため息を付いた。この誘いに断れない自分がいるからだ。
「本当にいいのか?」
「うん、あそこは堅苦しいだけだからな」
「そうか」
そう言ってリオンはスタンと同じくベッドの上に座った。スタンは「どうして?」と少し焦る。
「お前靴ないじゃないか。そのまま寝れるだろう?」
スタンはその考えがイマイチわからなかった。靴なんて頼めば召使いが持ってくるのに、と。その様子にリオンはまたため息を付いた。
「お前はもう少し貧乏になることをオススメする」
「へ?」
理解できないスタンにリオンは笑った。
(まぁ、これがスタンだな)
あの教育係に金銭感覚を養わせるなんてことはしなかったらしいとリオンは思った。
「何なんだよ・・・」
拗ねてふいっと横を向いた時、耳元に光るイヤリングがまた小さく見えた。リオンはその時、その宝石の意味をふと思い出した。
「そうだ、ルチルクウォーツは集中力を高め、感性を研ぎ澄ませる効果があるんだった」
(え?)
スタンはその何気ない一言にすぐに振り返った。
(俺がおかしいのはこれのせい?)
「な、リオン!じゃあ、えーっとオニキスは?!」
「オニキス?・・・相手を魅了させるみたいな効果じゃないか?戦いに役立つとは思えないが・・・」
(じゃあ、アレは・・・宝石の・・・せい・・・?)
驚いたまま動かなくなったスタンを見てリオンは不味いことを言ったのかと彼の肩を揺らした。
「間違って誰かにあげたのか?」
「リオン・・・」
今度は俯きだす。図星だったかと申し訳なく思っていると、スタンがこっちを向いた。
「なッ・・・!」
何故かその目からは涙が零れ落ちていた。大分ショックを受けたのかとリオンが焦ってしまう。
「大丈夫か?貰った相手とて悪い気はしないだろう。大丈夫だ!」
「違う・・・違うんだ・・・ごめん・・・リオン・・・ごめん・・・」
堰を切ったように溢れだす涙。リオンはどうして自分が謝られているのかわからなかった。
「何故俺に謝る?」
「だって、俺・・・だって・・・そんな、宝石の効果なんて・・・、俺ッ・・・リオンが・・・」
(なんでそこで僕の名前が出るんだ・・・)
思考を色々とめぐらせてると、スタンは冷静になったのか落ち着きを表す。独りでに深呼吸し始めた。
「落ち着いたのか?」
「うん、ホント、俺が馬鹿だったよ・・・。あいつは絶対に許さない」
「ど、どうした?」
雰囲気の変わったスタン。その静かな怒りは過去のスタンをみても始めて感じるものだった。
(こいつも怒ることあるんだな・・・)
「リオン、俺・・・リオンに言わなくちゃいけないことがある。でも、もう少し待っててくれないか?先にやらなくちゃいけないことが出来た」
「あ、ああ・・・」
何気なく気押しされてしまったりオンは素直に頷いた。何かあったんだろうと思う。もちろんあいつと言ってるからにはウッドロウあたりになるのだろう。リオンは何か騙されたらしいということだけはなんとなくわかったが、それ以上の追求はできそうになかった。
「俺、もっと賢くなる。ホントに、ごめん・・・リオン」
コメント
ウッドロウさん死亡フラグでましたー!(嘘?
R指定の内訳を教えてください。ワラ