8.信頼すべき仲間
「相棒!あいぼぅぅぉぉおおお!!」」
早朝、遊戯はそんなアテムの声で目が覚めた。一体なんだろうと目をこすりながら上半身を起こすと蒼白な顔をしたアテムの姿が映った。
「ど、どうしたの!?」
「相棒!セトが相棒に叶えてほしい願いを言ったって言うのは本当なのか!」
「・・・」
アテムの問いかけに遊戯は間をおいて顔を赤らめた。
「あ、うん、まぁ・・・」
歯切れの悪い遊戯にアテムはハッと頭を働かせる。
「セトの・・・願いって・・・」
考えたくない方へ思考が傾く。願いを言われただけでもショックを隠せないのに言われた願いが自分の考えたくないものだったら・・・。
「ボクが・・・ほしいって・・・」
パリンッ
初々しいほど顔を真っ赤にした遊戯の答えにアテムは絶句した。いや、マインドクラッシュを受けたといったほうがいいでしょう。
「あい・・・ぼう・・・。相棒はそれでいいのか!?セトだぜ?!海馬の前世のようなものなんだぜ!?」
慌てて遊戯の肩を持ち説得しようとするアテムの後ろで、言われたい放題のセトが腕を組んで立っていた。
「あ、セト・・・」
「セト!!」
「騒々しいな」
遊戯から離れたアテムは今度はセトに詰め寄った。傍から見ればかなり惨めなのかもしれないが、アテムにとってマイクラはかなり効いたようだ。
「セトもだ!別れが来るとわかっているのに相棒が欲しいなんて、それが願いだなんてどうかしてるぜ!!」
そう、いつか別れが来る。
その言葉に二人は一瞬押し黙ったが、セトはすぐに真っ直ぐにアテムを見直した。
「そのようなこと、二人ともわかっている。矛盾すると思ったので最初はないと答えたのだ。しかし、それ以外の願いなど初めからなかったのだ」
「相棒はいいのか?!」
アテムは遊戯のほうを見つめた。
「うん、覚悟なら出来てる」
そう言った遊戯の瞳はまっすぐにアテムを見つめ返した。アテムは一人どこかに残されたような感覚がして胸の痛みに俯いた。
「・・・そうか・・・」
アテムはそう呟くと遊戯の部屋を出て行った。
「アテム!」
遊戯はベッドから出て駆け寄ろうとしたがセトが制した。今自分たちが行ったところで彼を癒す言葉など出てくるわけが無いのだから。
(・・・では・・・俺は何のためにここへ?)
アテムは一人街の中を歩いていた。召喚(よ)ばれた二人。しかし自分がこの世界へとやってきた理由がわからなかった。もしかすれば還る場所だったのかと思ってみるが心のどこかでそれは違うような感じがするのだ。
(それにしても相棒がセトを・・・。だからあまり一緒に居させたくなかったんだ)
アテムはいつの間にか街のはずれへと進んでしまっていた。少し遠くに王宮とそこに栄えた街が見える。辺りは黄色い砂で覆われており、風に乗ってさらさらと音がしている。
「相棒・・・」
このまま戻っても自分のすべきことはないなと思いつつ、また砂漠へと一歩進んでいく。
「もうひとりのボクーーーーーー!!!」
後ろから大きな声で呼ばれた。振り向くと小さな身体で一生懸命に走ってくる。
「あ、いぼう・・?」
ぎゅっと遊戯が抱きついた。走ってきた勢いに押されそうになったが、なんとか踏みとどまる。
「やっぱり!嫌な予感がしたんだ!もうひとりのボクは精神的に弱いからね!」
「うっ・・・」
何だかフォローにもなってない精神攻撃がアテムの心に突き刺さった。
「どっか行こうとしてたでしょ!『俺なんか居る場所は無い・・・』とか言って!」
思い切り顔に指を差されて、しかも物真似までされてアテムは少しむっとなった。どうして遊戯にそこまで言われなくてはならないのかと、もう身体を共有しているわけではないのに。
「相棒が来なくてもちゃんと・・・」
「キミがまた消えるのだって本当は嫌なんだ・・・!!」
「相棒・・・」
遊戯は泣きそうになっている自分の顔を見て欲しくなくて、俯いて肩を震わせた。
「ボクが早く帰りたかったのは・・・こうして一緒に居る皆と、キミと、また別れるのが辛くなるって思ったからだよ・・・!あの時キミと決別できたって思ってた。だけど、また・・・こうして・・・会うから・・・」
砂が転々と色を変えていく。アテムは遊戯も自分と同じことを思っていたのかと少し驚いた。この日々の中で遊戯は早く帰ることしか考えて無いのかと思っていたからだ。その理由がそういうことだとは。
「セトとの事だって・・・っ・・・好きになっちゃいけないってっ・・・海馬君と勘違いしてるんだって・・・っ」
その言葉を聞いたときアテムは不思議と嫌な気持ちがしなかった。むしろその全てをさらけ出して話してくれる遊戯と自分との信頼が嬉しいとさえも感じたほどだ。
(俺は相棒との絆があればそれでいいんだろうな・・・)
「そんなに泣くなよ、相棒?男の子だろ?・・・それに俺はどこも行かないし、セトだってそれを理解してるんだろ?」
アテムの言葉に遊戯は目を擦りながら顔をあげる。
「だったらたくさん楽しもうぜ!もしかしたらうーんと長い間居られるかもしれないんだ」
「ありがとう、もう一人のボク。ボクはやっぱり君がいないとダメなのかな」
そう言って遊戯は微笑んだ。その安心した顔をみたアテムはさっきスルーした話題を突っ込んだ。
「で、海馬と勘違いしてるって・・・どういう意味だ」
コメント
あれー?闇表?w
というのもさっきまで素敵な闇表(表闇)サイトにお出かけらんらんるーだったので・・・。