〜あるひとこま〜





 俺、遊城十代!
 今日はあの初代決闘王の武藤遊戯さんと会う日なんだ!
 くーっ、楽しみだぜ!あの決闘のときメルアド聞いててほんと良かったぁ。今思えば相棒であるカードを渡されたあの時からこうやってデートしたかったんだぜ!
「遊城くん」
 思えば長かったぁ。
「うーん、十代くん?」
 はい、俺が十代ですって…!?
「遊戯さん!す、すみません!ぼーっとして…」
 うわぁ…今日も可愛いな…じゃなくて、俺遊戯さんになんて失態を…。いやいやだけど待ち合わせ時間の1時間前に着いてて良かったぁ。頑張った俺!
「全然大丈夫だよ。ここわかりやすくて待ち合わせにちょうどいいよね」
「海馬コーポレーションはやっぱり街のシンボルっすよね!あ〜じゃぁ店に行きましょうか」
「うん、そうだね!新しいビルに変わったし」
 デートデート♪
 俺達どこに行くと思う?カードショップなんかじゃないぜ、今日は服見に行くんだ。カードショップがデートの最初じゃ子供って思われるかもしれないからな。
「…どこへいく遊戯」
 さっそく行こうとしたらなんかわかんないけど後ろから声がした。
 俺の遊戯さんに気安く声をかけるなんて…。
「あっ、海馬くん!」
「カイバっていうのか…って海馬!?」
 海馬ってことはもしかして…。
「貴様は誰だ?」
 やっぱり海馬瀬人!俺のこと知らないんすか!?
「やだなぁ。遊城十代くんじゃない」
「デュエルアカデミアにいたやつか」
  お、覚えてくれてる!オーナーに会うことなんて滅多にないのに…っ!
「遊戯と戦ったらしいな」
「はい」
俺にとって大事な決闘だった。心から楽しいデュエルを俺に教えてくれた闘いだったんだから。
「海馬くんこそ日本にいたんだね」
 思えば俺ってすごい人達とすごい確率で会ってるんじゃないか?
「貴様が連絡を寄越さないからだ!童実野町に居るときいたので戻ってきてやったというのに!」
 つまり用事があると!?そりゃないぜ!今日は遊戯さんとのデートだってのに!
「海馬くん、今日は十代くんと出掛けるところなんだけど…」
 さすが遊戯さん分かってくれてるぜ!
「…ふぅん」
 てことで今日は諦めて…
「その用事に付き合ってやる」
 ってなんでそうなるんだ!
 海馬コーポレーションの社長って言ったらめちゃくちゃ忙しいはずだろ!?
「カード買いに行くとでも思ってるでしょ」
「服買いに行くんですけど…」
 社長に合う服とか無いだろうし帰ってほしい。
 だいたい今日は二人の初デートなのに。
「どこの店に行く?」
「あの新しくできたDOMINOファションビルですけど…」
「ふぅん」
 うわぁ、おもいっきりニヤってした。
「海馬くんまさか…」
 俺も同じこと思ってます…。
「我社の視察も兼ねるか」
「やっぱり…」
 遊戯さんがため息ついてる…!なんか大人っぽいぜ…じゃなかったっ。
「このオレに不可能などない」
「そういう問題じゃないと思うけど…どうする?十代くん」
 どうするって言われても、遊戯さんは嫌じゃ無いんですね。とほほ。まぁ当たり前か、知り合いだし、俺達付き合ってるわけでもないしな。ここは社長も連れてくか。なんか買ってもらえたりして。
「俺は構いませんよ」
「ほんとに?嫌なら言ってもいいんだよ?」
 有難いお言葉ですが、俺が率直にそんなこと言ったらどうなると思ってるんですか・・・。
「いや、かまわないです・・・」
 海馬サマの視線を下斜めにかわしながら俺は遊戯さんにそう言った。遊戯さんは困ったような感じで俺と社長さんをみている。
「・・・うーん」
「全然いいですって!」
「・・・やっぱり二人だけでいく!」
 え?
 そんな顔を俺も社長も遊戯さんに向けた。
「約束は十代くんが先だから、ね!ってことで行こう!」
 俺は社長から逃げるように去っていこうとする遊戯さんに腕を掴まれて、よろけながらついていった。社長は黙って俺らを見送ってるだけだった。

「いいんですか・・・?」
「いいんだよ。十代くんは一緒のほうが良かった?」
 う、上目遣いは危険だ・・・。
 それに一緒だなんてそんなわけないじゃないですか。
「いや・・・」
 でも、もちろん二人っきりのほうがいいです!なんて言ったら変なやつだよなぁ・・・。
「ボクはあの時十代くんが断ると思ってんだけどな」
「え?!」
 それって・・・もしかして・・・。いやいや、俺は何先走ってんだ・・・っ!
「遊戯さんは一緒に行ってもいいのかと思って、・・・すいません」
「クスッ・・・まぁいいか。いこ」
「え?あ、はい!」
 パッと手を繋がれた。
 こ、これはどういうことなんだ?!もしかして遊戯さん・・・!!
 あたふたとしながらも俺はそっと遊戯さんの手を繋ぎ返した。それに気づいたのか遊戯さんは微笑むと一緒にショッピングモールへと向かった。

 ―――俺、少しは期待していいのかな?




 一方・・・。
「おのれ・・・凡骨以外に虫がついていたとは・・・」
 わざわざアメリカから飛んで戻ってきてみれば、この有様。海馬は至急磯野を電話で呼び出すと、アメリカへと戻ったのでした。ちゃんちゃん。




コメント
ずーっと前に書いた十表
GXを知らないけど、設定に萌えた(マテ

十代→←表←海馬
ですが、十代のヘタレ振りに表ちゃんは温かく見守るだけな感じ。
社長がかわいそうなのは仕様です。